2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧
海外勤務多かりし子は連休も 夏休みも帰省し吾を連れ出す
諦め居し子規庵開けくれ六畳の はだか電球の下語られるを聞く
夫の分長生きせよと子等呉れし 電動ベットに安らぎ眠る
幾度も監視に行きしギフ蝶の 卵盗まれ心淋しき
ギフ蝶のヒメカンアオイの葉の裏に 産卵するをじっと見守る
大正池に並み立つ大小の枯木立 梅雨上がりの日に白く浮き見ゆ
嬰児にはめられ居りし足の輪 今日とれし臍の緒日陰干しする
吾が庭より移しハナノキ紅葉する 傍らに朝々襁褓を干しぬ
顔も見ず逝きたる夫の墓前に 帰国せし孫深々ぬかずく
正岡子規名付けしとふ「無塵庵」 茅ぶき屋根より雫し止まず
左千夫先生の小説の舞台となりしお蛇ケ池 雨に煙りてただに静もる
ヒムロ誌に吾と同じく亡き夫を 詠める歌多しなべて寂しも
心なき人の言葉も聞き流す 術も身につく年重ね来て
大正池の枯木並み立つ遊歩道 うつぼ草の花今盛りなり
母に似し姉と語れば遠き日の 母の仕草の蘇りくる
逝きし兄に代れるものなら代りたしと 嘆き居し母の今日十四回忌
夫の分まで長生きせよと言ひくるる 娘等あれば命愛しまむ
子等の幸は親の仕合せと言ひし母の 心を年経てわれも知りたり
ギフ蝶をひと目この目で見たきものと 監視役に山に入り来ぬ
氷河時代の生き残りときくギフ蝶の 監視にきて見得し今日の喜び
見事なる越前蟹の食べ方の 説明に始まる奥能登の宴
千里浜の松の並木の間より 見ゆる水平線にある船小さし
小雪舞う輪島の朝市活気あり 頬かぶりせし女等逞しく商ふ
わが生きし歳と同じ昭和の世 遂に終るか三時間の後
木曽見茶屋の峠に立てば若葉の谷を 猫柳の絮毛舞ひ上がりくる
在りし日に夫の植ゑたるハナノキの 木陰に憩ふ墓掃除を終へて
門先の椿の小枝に脱皮する 蝉を幼と見守りてをり
永保寺の参拝すみしバスの中 雨に濡れし落葉散らばる
開店の焼肉店に赤提灯ともり わが近隣のさま変はりたり
生き形見と笑ひくれたるエプロンをかけ 友の葬りの手伝ひをする