2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

母の短歌集

夫君の全快を祈り友の折りたるか 小さき千羽鶴部屋に飾れる

母の短歌集

新玉葱のサクッと切れる感触の 心地の良くてピクルスを作る

母の短歌集

吾が選歌して下されし石井先生の 「東楓集」を偲びつつ読む

母の短歌集

大噴火の恐ろしき偲び浅間山 北斜面に続く溶岩を見つ

母の短歌集

鬼押出しの黒き岩間の奥深く 光蘚金の光を放つ

母の短歌集

子供等の健康を祈り鬼押出しの 観音堂の鐘を鳴らしぬ

母の短歌集

軽井沢のショピングブラザ人群れて 見て居るのみにただ疲れたり

母の短歌集

蟷螂の卵のつきし五加の枝 燃やさず残し畑隅にさす

母の短歌集

欄干に寄りて見下ろす天竜川 散り込む桜の花が筋なす

母の短歌集

園芸店の花から花へ蝶の舞ふ 花苗を迷ひ手間どれる間を

母の短歌集

若き日は思ひ見ざりし玄関の 上がり框に踏台を置く

母の短歌集

二輪草と九輪草の萌え確かむる わが背に春日温かくさす

母の短歌集

友逝きて空き家となりし塀の外 眩しきまでに水仙の咲く

母の短歌集

若き等の帰りし後のどの蛇口も きつく締められ吾は戸惑ふ

母の短歌集

泥んこになりて田螺を亡き兄と 競ひてとりし遠き日恋ほし

母の短歌集

娘の部屋の鉢植ゑパパイヤ楕円形の 五センチ程の青き実つけぬ

母の短歌集

茶に呼ばれ往き来せし友二人逝き 心淋しき正月となる

母の短歌集

在りし日の友手作りの柏餅 また栗おはぎの味を忘れず

母の短歌集

花作りと野菜作りを好みし友 草とりてゐし姿眼に見ゆ

母の短歌集

畑隅に落葉を厚く被せ置きし 明日葉の緑日につやめけり

母の短歌集

満開の黄梅の花に雪の降り 氷雨に変はり暮れゆくが見ゆ

母の短歌集

エコロジー進み来たりて二月より レジ袋五円の貼り紙目に立つ

母の短歌集

干草を積める畑隅に黒き野良猫 今日も安らに昼寝してをり

母の短歌集

財もなく夫亡く老いし吾なるも 宝と思ふこの子ども等は

母の短歌集

応募数十一万票より選ばれし 今年の漢字は「変」と決まりぬ

母の短歌集

健やかに生れ育つを祈りつつ 曽孫のベビー服一式を編む

母の短歌集

仕事も住む所も失ひて正月を 「派遣村」に過ごす人等思ひぬ

母の短歌集

正月も帰宅できずと病院からの 友の電話が別れとなりぬ

母の短歌集

正絹の紅白の布を斜めに裁ち 作りし薔薇の花の愛らし

母の短歌集

都会育ちの嫁は声あげりんご園に 真っ赤なふじを籠一杯捥ぐ