2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

母の短歌集

休まずに代理も出さず務め来し 五年の役の引継ぎをする

母の短歌集

「平和とふもの売られれば買ひたい」とふ アフガンの人々やつれたる顔

母の短歌集

日だまりを黄色に染めて咲き盛る 福寿草を和紙のちぎり絵に描く

母の短歌集

謂れなきこの虚しさは何ならむ 香りを放つ蝋梅に寄る

母の短歌集

国の対策進みてゐしに雪印の 悪事に又もや牛肉遠のく

母の短歌集

ブルカ脱ぎし乙女等の微笑に心和ぐ アフガンのさらなる平和を願ふ

母の短歌集

五年生の児等の育てしプリムラを 一人暮しの吾等に呉れぬ

母の短歌集

諸もろの電子音なる厨辺に かまどの前の亡き母を想ふ

母の短歌集

戌年より作り始めし木目込人形 未申酉にて十二支揃ふ

母の短歌集

わが味に似て来し娘のおせち料理 食の進みて正月を過ごす

母の短歌集

母に似て太りし姉と父に似て 痩せし吾とが露天風呂に並ぶ

母の短歌集

「戦」に代表されし二千一年 暗きニュースの続きて暮るる

母の短歌集

桜葉の散りしくマレット場に思ひ見ぬ 良きスコアを腰下し記す

母の短歌集

亡き母が蝗の足を嫌ひし吾に 口結びかめと言ひしを思ひ噛む

母の短歌集

しばらくは楽しき夢を吾も見む 生れて初めて宝くじを買ふ

母の短歌集

百本も漬けし遠き日思ひつつ 一人分十本麹漬けにする

母の短歌集

稲の花の咲きゐる時間は一時間か 農家に育ちし吾知らざりき

母の短歌集

「平成の将軍ヤッシー」と知事の口上に 国盗り綱引き雨の中に始まる

母の短歌集

子供等との交流会に幼き日 思ひ出しつつお手玉をする

母の短歌集

幾度か霜にあてたる唐辛子の葉 母なせしごと佃煮に煮る

母の短歌集

文明先生がみ子の名前に付けられし 夏美川とぞ親しみ見下ろす

母の短歌集

西行庵は木立の中に薄暗く 面優しき座像静もり座す

母の短歌集

「良き宿に眠りは足りぬ」と文明先生 詠まれし竹林院に吾等も宿る

母の短歌集

世尊寺の桜の木下に初めて見る ツマグロヒョウモン蝶動きにぶく舞う

母の短歌集

声なきも吾の心に生き残る 夫に折々問ひかけて暮らす

母の短歌集

朝床に続け来たりし手の指廻し わが体調の目安となり来ぬ

母の短歌集

世に在らばさぞや喜びし夫ならむ 香上げ娘の童話本供ふ

母の短歌集

妹等にも吾にも秘めて書きためし 童話を娘は出版をせり

母の短歌集

計らずも人の言葉に傷つきぬ 吾もかくして傷つけ居るや

母の短歌集

オフトークより今宵流るる吾が拙き 意見発表を面映ゆく聞く