2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

母の短歌集

夫君を看とりつつ身辺の整理もし 逝きたる友を健気に思ふ

母の短歌集

亡き母と挽きたる香煎思ひつつ 深妙寺の石臼庭園を巡る

母の短歌集

縫ひぐるみ園児等描きし絵など飾る 知事室と思へぬを硝子越しに見る

母の短歌集

ヤジも飛ぶ県議会中の議会室に 吾の選びし議員を目で追ふ

母の短歌集

これ迄は関心もたざりし党首討論 三回目今日も期待持ち聞く

母の短歌集

亡き夫との思い出多き川路駅 七十二年の歴史閉じたり

母の短歌集

鵯は今日も来たりて万両の 赤き実啄み池の水のむ

母の短歌集

植物の特徴とらへし新聞の 版画切りぬく朝のいとまに

母の短歌集

中国の土産に貰ひし筆下し 久々に子等に手紙をしたたむ

母の短歌集

老人会の総会の前に逝きし君等へ 黙祷を捧げ開会となる

母の短歌集

歌にせむ物を捕へて言葉を探す しばし時の間心豊けき

母の短歌集

水仙の花に霧ふき羽化終へし 新しき命の蝶を止まらす

母の短歌集

美しく整ひて羽厚くなりし 黄揚羽を水仙の花に放てり

母の短歌集

黄揚羽の羽化を見せむと卵より 育てし蛹を娘は持ち来ぬ

母の短歌集

十五年の役目終りて西南の 空をミールは光りつつよぎる

母の短歌集

家電法の施行前なる電気店 古き家電山と積まれる

母の短歌集

新しき注連縄張られし道祖神 姿小さきに春日あまねし

母の短歌集

土の臭ひとその感触が親しくて 雪消えし畑にほうれん草を摘む

母の短歌集

篦のくぼみあまた残れる裁台を 久々に出し娘の着物裁つ

母の短歌集

日に三度の雪かき終へて息を整ふ まぎれなく体老いしと思ふ

母の短歌集

昭和三年以来の大雪に屋根より下がる 雪のカーテンを初めてわが見る

母の短歌集

わが暮らし昨日に何ら変るなし 今日より始まるか二十一世紀

母の短歌集

来る年の干支なる己の木目込人形 ピンクの衣に愛らしく仕上がる

母の短歌集

老い吾にも女性ホルモンの効力あるや 柘榴酒赤くルビーの如し

母の短歌集

お米の中に八十八人の神様が宿ると 祖母の言ひ居しが浮かぶ

母の短歌集

橘寺の五重塔の柱穴は 水面に秋雲うつし静もる

母の短歌集

酒船石見むと石段七十五段 散りしく竹の葉踏みつつ登る

母の短歌集

背中少し曲がれるわが影したがへて 久々に農道への歩みを伸ばす