2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

母の短歌集

夢を良く見るのは脳の活性化の 印と聞けど吾はあまり見ず

母の短歌集

株殖えしカモミールの花香りつつ 月夜明りに仄白く浮く

母の短歌集

戦時下に四人の子等を育てし吾 老後に備ふる余力なかりき

母の短歌集

初任地の夫の若かりき面影を 偲びつつ校庭の桜を娘と見る

母の短歌集

古里の空に向ひて手を合はせ 独りの暮らしの一日始まる

母の短歌集

亡き人を離りし人を偲びつつ 春の空ゆく雲仰ぎ立つ

母の短歌集

春待ちし心に嬉し五加三つ葉 摘みて夕餉の食のすすみぬ

母の短歌集

鏡に写る皺の目に立つ老いし顔 心迄老いるなと己に言ひ聞かす

母の短歌集

足痛めし友の歩調にわが合はせ 早目に出でて会合に行く

母の短歌集

ごみ出しの一輪車とめ君の飼ふ 鶯の鳴くを耳澄まし聞く

母の短歌集

浄化脱臭除菌作用あるときく 備長炭入れ炊きし飯旨し

母の短歌集

弱かりし君に食べさすと父の叩きし 骨だんごの味を忘れず

母の短歌集

古里の「事の神送り」の今宵なり 事ぼた餅を作り母を偲びぬ

母の短歌集

うすれゆく記憶の戻る古里の 水車小屋跡に母のまぼろし

母の短歌集

新しき年の始めの望の月 祈りにも似る心地して仰ぐ

母の短歌集

「人生に余生はない」を読み終へて 何か身内に力湧きくる

母の短歌集

イヌノフグリの小さき花の蜜を吸ふ 蜜蜂の群れ羽音かそけし

母の短歌集

携へ来し夫の写真に年取りの 陰膳を子は整へ呉るる

母の短歌集

子の家に年取りすませ仰ぐ空 十三夜の月煌々と照る

母の短歌集

古里の神の峰に向ひ朝々に 己励まし己慰む

母の短歌集

小鳥等の寄りて餌台のりんご啄むを 雪見障子を上げて見てをり

母の短歌集

漬け大根百本洗ひし遠き日を 思ひつつ一人分十本を洗ふ

母の短歌集

吾が庭に生れし蟷螂か網戸の上に 命尽きたるを土に埋めやる

母の短歌集

独り暮しの心さらして詠める歌 蔑む人あり羨しむ友あり

母の短歌集

母を偲ぶよすがとなれる茶の花よ ひそかに咲きてもろく散りゆく

母の短歌集

園児等と「オヒトツオロシテオーサラリ」 ほのぼのとしてお手玉をとる

母の短歌集

稲刈りの済みし輪だちの水たまり 番のとんぼしきりに尻打つ

母の短歌集

咲き始めしホトトギスの花を夫に供え 新アララギに五首のりしを告ぐる

母の短歌集

新アララギに吾と同じく独り暮らす 人の歌多し己励ます

母の短歌集

夏ばての特効薬と亡き母は 大根葉の胡麻和へ作りて呉れき