2016-09-30

母の短歌集

追憶の風

淋しさも少し持ち来て娘の家に 移りて一年健やかにあり

2016-09-29

母の短歌集

追憶の風

幾冊もの吟行歌集に遠き日の 諸々の思ひ浮び来るなり

2016-09-28

母の短歌集

追憶の風

通院の病院前に移植されし 二百年の松の活着祈る

2016-09-27

母の短歌集

追憶の風

道の駅の棚に売られる虫篭の 鈴虫次々涼しげに鳴く

2016-09-26

母の短歌集

追憶の風

娘の許へ移りし家に迷ふなく 夫よ来ませと迎へ火を焚く

2016-09-25

母の短歌集

追憶の風

働きて初めて貰ひし給料の 嬉しかりしを孫は言ひたり

2016-09-24

母の短歌集

追憶の風

電球に靴下を被せ繕ひて 履かせし戦後を子等に語りぬ

2016-09-23

母の短歌集

追憶の風

病院の待合室の高窓に おにやんましばし羽根休めをり

2016-09-22

母の短歌集

追憶の風

悪賢き郭公と思へず爽やかに 鳴けるを今日も心地良く聞く

2016-09-21

母の短歌集

追憶の風

鶯の鳴き声真似る口笛に すぐに応えて爽やかに鳴く

2016-09-20

母の短歌集

追憶の風

初恋の香りするとふ芝桜の 花に寄りゆきしばし香の中

2016-09-19

母の短歌集

追憶の風

吾等住む地球と月と太陽が 一直線に今列びたり

2016-09-18

母の短歌集

追憶の風

天空にリングを描きし金環日食 初めて見得し今日の喜び

2016-09-17

母の短歌集

追憶の風

新アララギに同じ先生の選受くる 百歳の君に肖りたく思ふ

2016-09-16

母の短歌集

追憶の風

穏やかに専業主婦に終はる一世 多き友等に導かれ来し

2016-09-15

母の短歌集

追憶の風

塩麹のブーム来たりて漬け込みし 絹豆腐の味チーズの如し

2016-09-14

母の短歌集

追憶の風

リズム良く娘が階段を上り下りする 音羨しわが叶はねば

2016-09-13

母の短歌集

追憶の風

「心ひとつ」の赤襷かけ相馬市長 東京マラソン完走したり

2016-09-12

母の短歌集

追憶の風

二十度の角度に整然と南北に向く メガソーラ光輝く

2016-09-11

母の短歌集

追憶の風

弱き身をいとほしみ生き平均寿命 八十六の誕生日今日

2016-09-10

母の短歌集

追憶の風

百円にて三鉢買ひ来し胡蝶蘭 娘は丹精込め見事咲かせむ

2016-09-09

母の短歌集

追憶の風

男神が上社より下社の女神様へ 向ひし跡とふ今朝御神渡り

2016-09-08

母の短歌集

追憶の風

御神渡りのロマンを思ひ四年ぶりの 氷のせり上がる音を聞きをり

2016-09-07

母の短歌集

追憶の風

亡き父の網を被りて養蜂に 励みゐし姿ありあり浮かぶ

2016-09-06

母の短歌集

追憶の風

指折りて初めて短歌詠める娘に わが遠き日の姿の浮かぶ

2016-09-05

母の短歌集

追憶の風

同居せし吾の短歌に刺激され 娘は指折り歌詠みはじむ

2016-09-04

母の短歌集

追憶の風

還暦を過ぎたる子等と老いを忘れ セブンブリッジの遊びに興ず

2016-09-03

母の短歌集

追憶の風

久々に訪ね来し孫と在りし日の 娘を語れば悲しみの湧く

2016-09-02

母の短歌集

追憶の風

学び終へ就職決まりしを孫は告ぐ 心身共に逞しく見ゆ

2016-09-01

母の短歌集

追憶の風

はらからと競ひ作りし紅白の 繭玉飾りし遠き日ありき