2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

雪割草

雪割草

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火とぼし山

新しい出発 32 「きよ。足長と一緒に、時々遊 びにくるからね。元気で暮らし てね。じゃあ、私たちは諏訪へ 帰ります」 手長と足長が、なごりおしそう にいいました。 「気をつけて帰ってくださいね。 明神さまによろしく」 きよは、二人の姿がみえなくな …

火とぼし山

新しい出発 31 すると、 「きよ、静岡へついたかな。お まえはこれからそこで暮らすの じゃ。わしの友だちのばあさん と一緒にな。きよ、記憶がもど ったら、いつでも諏訪へもどっ ておいで。待っているぞ」 どこからか、明神さまの声が聞 こえてきました…

火とぼし山

新しい出発 30 「こちらこそ、よろしく。お世話 になります」 「こんなかわいい人と暮らせる なんて、私うれしいわ」 おばあさんはうれしそうでした。 「きよ。外へでてみましょう。 静岡は、暖かくて良い所ですよ」 手長がいいました。 外へでると、目の…

火とぼし山

新しい出発 29 「きよ。ここは、静岡じゃ」 「静岡?」 「そう、静岡じゃ。きよは、これ からここで暮らすのじゃ。この おばあさんと一緒にな」 足長がいいました。 「おばあさんと」 「そうじゃ。このおばあさんと 一緒に暮らすのじゃ。この人 は、明神さ…

火とぼし山

新しい出発 28 手長と足長は、ぐっすり眠って いるきよを、静岡までつれてい きました。 次の朝。 「きよ。目がさめたか」 「はい。あなたは?」 「わしは、足長じゃ。そして、こ ちらが手長」 「私を、淵から助けてくれたか たですね。その節は、大変お …

火とぼし山

新しい出発 27 「やはり、きよは何もおぼえて いないのですね。自分の名前 も、大好きだった次郎のことも、 みんな忘れてしまったなんて。 かわいそうに」 手長は、きよの気持を思うとや りきれません。 「手長、足長。そういうわけな ので、きよが眠って…

火とぼし山

新しい出発 26 「夜遅くにもうしわけない。こ れから、きよを静岡の知り合 いまでつれていってほしい」 「えっ、きよを、静岡へつれて いくのですか」 手長が驚いて聞きました。 「そうじゃ。きよは、自分の名 前も、大好きだった次郎のこと も、何もおぼ…

火とぼし山

新しい出発 25 きよの両親も、記憶のない娘と 暮らすのはつらいだろう。 いろいろ考えた末、明神さまは、 静岡の知り合いにきよを預けよ うと思いました。 その夜。 「手長、足長。明神じゃ。用事 があるので、すぐきてほしい」 「はい、わかりました」 手…

火とぼし山

新しい出発 24 「私は、うずにまきこまれたこと も、助けていただいたことも、何 もおぼえていません」 「そうか。おぼえていないのか」 「ええ、何もおぼえていません」 きよは強いショックを受け、すべ ての記憶がなくなっているようで した。 記憶がな…

火とぼし山

新しい出発 23 「きよ。おまえは、大好きな次郎 に会いに行く途中、小坂観音沖 の深い淵で、おぼれてしまった のじゃ」 「次郎さんて、誰」 「おまえが、この世で一番好き な人じゃ」 きよは、大好きだった次郎のこ ともおぼえていないようでした。 「私が…

火とぼし山

新しい出発 22 「きよ?」 「おまえの名前じゃ」 「私の名前は、きよというので すか」 「そうじゃ」 きよは、自分の名前がわから ないようでした。 「ここは、どこ」 「わしのやしきじゃ。わしは、 諏訪の神・明神じゃ」 「明神さまのやしき? 私は、 な…

火とぼし山

新しい出発 21 きよ。次郎のことは忘れるのじゃ。 心がはなれてしまった人に、いく ら心をよせてみてもどうなるもの ではない。次郎のことは、忘れて しまいなさい。そして、一日も早く、 きよにふさわしいすてきな人をみ つけてほしい。 明神さまは、眠り…

火とぼし山

新しい出発 20 普通のおなごは、「あの人が好 き」「この人が好き」と、いろいろ な男に心をうばわれるものじゃ。 次郎も、主人の姪に会うまでは、 きよのことが大好きだった。でも、 みよに会ってから、次郎の心は だんだんに変わっていったのだ ろう。そ…

火とぼし山

新しい出発 19 「手長、足長。今日はご苦労じゃ った。家にもどって、ゆっくりお休 み。きよのことは、心配するな。 後は、わしが世話をするから」 「じゃあ、明神さま、よろしくお願 いします」 手長と足長は、家へ帰りました。 きよは、意識がもどらない…

火とぼし山

新しい出発 18 いくら明神さまが話しかけても、 きよは何も答えません。 「明神さま。きよは、だいじょう ぶでしょうか」 手長が心配して聞きました。 「だいじょうぶじゃ。三日もすれ ば、意識がもどるだろう」 「意識がもどれば、おぼれた時 のことを思…

火とぼし山

新しい出発 17 「私が、じゃまだなんて」 「次郎は、大きな農家の一人娘 とつきあっていただろ。主人から、 姪と結婚してほしいといわれ、ど うしたらよいのかわからなくなって しまったのだろう。 次郎は、小さな時から、おまえ のことが大好きだった。で…

火とぼし山

新しい出発 16 「やっぱりって、どういうこと」 「次郎は、わざと別の場所で火 をたいたのじゃ」 「わざと?」 「そう。次郎は、いつもとちがう 場所で、火をたいたのじゃ」 「次郎さんは、なぜそんなことを したのでしょう」 「おまえが、じゃまになった…

火とぼし山

新しい出発 15 すると、 「次郎さんが・・・」 「次郎がどうした」 「次郎さんがたいてくれた火が」 「きよ。火がどうしたのじゃ」 「火が南にともっていたの」 「何、火が南にともっていたと。 きよ、それは、ほんとか」 「はい。火が、いつもより南に と…

火とぼし山

新しい出発 14 「手長、足長。ご苦労さま。きよ を助けてくれてありがとう」 明神さまは、二人に何度も礼を いいました。 「さあ、そこへきよをねかせてお くれ」 「はい」 手長と足長は、ふとんの上にきよ をねかせました。 「きよ」 「きよ」 「なぜ、う…

火とぼし山

新しい出発 13 「きよ」 「きよ」 二人は、何度もきよの名をよびま した。 でも、きよの意識はもどりません。 「明神さま。今、きよを助けまし た。しかし、意識がもどりません。 どうしたらよいでしょうか」 「きよを、わしのやしきへ運んで くれ」 「は…

火とぼし山

新しい出発 12 「あなた。何かひっかかったわ」 二人は、力をあわせてひきあげ ました。 きよでした。 きよは、水を飲んでいるのか、ぐ ったりしています。 「早く水をはきださなくては」 手長と足長は、きよをかかえ岸に あがりました。 そして、水をはき…

火とぼし山

新しい出発 11 「じゃあ、今度はあちら側をさ がそう」 「あなた。うずにまきこまれな いように、気をつけてね。それ にしても、きよはどこへ行って しまったのでしょう。淵の奥深 く沈んでしまったのかしら」 手長は、うずの中を、何度もか きまわしまし…

火とぼし山

新しい出発 10 手長は、長い手で、うずの中をか きまわしました。 しかし、何もひっかかってきません。 「あぶない。あなた、気をつけて」 「手長。おまえこそ、気をつけろ」 二人は、何度もうずの中へひ きこまれそうになりました。 「手長、もうやめよう…