2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧
豊玉比売 9 「婿のつり針をとった魚はいるか」 「鯛が喉に何かささって、物を食 べることができないとなげいてい ます」 「その鯛は、ここにいるか」 「おりません」 「その鯛をつれてきなさい」 海の神が鯛の喉を調べると、大 きなつり針がささっていまし…
豊玉比売 8 海の神は、山彦にたずねました。 「昨晩、大きなため息をついてい たと、娘が心配しています。何か 心配ごとでもあるのか」 「私は、なくしてしまった兄のつ り針を探しに、ここへやってきま した」 山彦は、兄と道具の取り換えをし て、つり針…
豊玉比売 7 山彦のため息を聞いた豊玉比売は、 どうしたのだろうと心配しました。 豊玉比売は、海の神に相談しました。 「父上。山彦さまは、ここへきて 三年になりますが、ため息などつ いたことは一度もありません。そ れなのに、昨晩は大きなため息を つ…
豊玉比売 6 そして、いろいろな海の幸を並べ、 山彦に御馳走しました。 「山彦さま。娘の豊玉比売をもら っていただけないだろうか」 海の神は、たくさんの結納品を、立 派な台にのせ用意しました。 その日。 山彦と豊玉比売は、結婚しました。 そして、海…
豊玉比売 5 「あのかたは、瓊瓊杵尊さまの御 子・山彦さまじゃ」 「瓊瓊杵尊さま?」 「瓊瓊杵尊さまは、天照大御神さ まの孫。そのかたの御子が、山彦 さまじゃ」 「山彦さま、どうぞ中へ」 海の神は、山彦を宮殿の中へ案内 しました。 そして、海驢(あし…
豊玉比売 4 背の高いりりしい青年が、にっこ り笑って立っていました。 「まあ、すてきなかた」 「なんてかわいい人だろう」 お互いに一目ぼれ。 豊玉比売は、父の海の神に知らせ ました。 「父上、宮殿の入口に、すてきな 青年がきております」 「どなたか…
豊玉比売 3 侍女は、その玉をとろうとしまし たがとれません。 しかたがないので、そのまま豊玉 比売に瓶を渡しました。 「外に誰かいるのですか」 「はい。桂の木の上に、立派な青 年がおります。海の神のような、 高貴な感じのするかたです。その かたが…
豊玉比売 2 侍女が水をくもうとした時、井戸 の中がぴかっと光りました。 「何だろう」 ふしぎに思った侍女が上をみると、 桂の木に青年がいました。 「水を一杯いただきたいのですが」 山彦は、侍女にお願いしました。 「どうぞ」 侍女は水をくみ、山彦に…
豊玉比売 1 しばらく行くと、大きな宮殿がみ えてきました。 「あれが、海の神の宮殿にちがい ない」 山彦は、ほっとしました。 宮殿についた山彦は、桂の木を探 しその木に登り、海の神の娘がや ってくるのをじっと待ちました。 二時間後。 海の神の娘・豊…
海彦山彦 10 「綿津見神とは?」 「海の神様じゃ。宮殿の入口に、 大きな井戸がある。そのそばに、 桂の木があるので、木に登って 待っているがいい。そうすれば、 海の神の娘がそなたをみつけて くれるだろう。そして、相談にのっ てくれるだろう」 「あ…
海彦山彦 9 「そうか。そんなことで悩んでい たのか。わしにいい考えがある」 「ほんとうですか」 塩椎神は、細かく編んだ竹の籠で、 舟を作ってくれました。 「さあ、この舟に乗りなさい。わし が舟を押すから、しばらくそのまま まっすぐに行きなさい。そ…
海彦山彦 8 山彦は、海に向かってつぶやきま した。 そこへ、塩椎神(しおつちのかみ) が通りかかりました。 「山彦よ、何を嘆いているのじゃ」 「私は、魚を釣ってみたいと思い、 兄と道具の取り換えをしました。そ して、兄が大切にしているつり針を な…
海彦山彦 7 山彦は、また別の剣で千本のつり 針を作り、海彦に渡しました。 「兄さん。どうかこのつり針で許 してください」 「許さん。元のつり針でなくては だめだ」 そういって、海彦はつり針を受け 取りませんでした。 そんなある日。 山彦はまた海へ行…
海彦山彦 6 山彦は毎日海へ行き、つり針を探 しました。 でも、つり針はみつかりませんで した。 山彦は、自分の長い剣をこわし、 五百本のつり針をつくり海彦にわ たしました。 「そんなつり針ではだめだ。元の つり針でなくては」 海彦は、つり針を受け取…
海彦山彦 5 「何、つり針をなくしたと。あのつ り針は、ただのつり針ではない。 その日とりたいと思っている魚が つれるふしぎな力を持っているつ り針なのだ。許さん。明日、海へ 行って、なくしたつり針をさがして こい」 海彦が大声で怒りました。 次の…
海彦山彦 4 「どうしよう。あのつり針は、兄 さんが一番大切にしているもの。 おこるだろうな」 山彦は、しょんぼりして家に帰り ました。 海彦も、一日中、山の中を歩きま わりましたが、一匹も獲物をとる ことができませんでした。 「山彦。おれのつり道…
海彦山彦 3 山彦が何度もうるさくいうので、 二人は道具を取り換えることにし ました。 山彦は、兄が大切にしているつり 道具を持ち、わくわくしながら海 へでかけて行きました。 ところが・・・。 何時間たっても、一匹も魚がつれ ません。 簡単に魚がつれ…
海彦山彦 2 一方、山彦は山へ行き、猟をして います。 きじ・鹿・いのしし・うさぎなど の、鳥や獣をとることが上手でした。 ある日。 「兄さん。たまには山へ行って、き じや鹿をとってみないかい」 「おれは、狩りはできない。いやだ」 海彦は、ことわり…
海彦山彦 1 木花之佐久夜比売(このはなのさ くやひめ)が、火の中でうんだ三 人のこどもたちは、りっぱな若者 になりました。 兄の火照命(ほでりのみこと)は 海彦、弟の火遠理命(ほをりのみ こと)は山彦とよばれています。 海彦は毎日海へ行き、鯛やひ…
木花之佐久夜比売 11 火照命(ほでりのみこと)・火須 勢理命(ほすせりのみこと)・火 遠理命(ほをりのみこと)の三人 です。 兄の火照命(ほでりのみこと)は 海彦、弟の火遠理命(ほをりのみ こと)は、山彦とよばれています。 無事に出産をおえた木花…
木花之佐久夜比売 10 邇邇芸命は、「誰のこどもかわか らん」と、小声でつぶきました。 そんな邇邇芸命をみて、木花之佐 久夜比売は悲しく思いました。 木花之佐久夜比売は、出産をする ため戸のない家に入り、出入口を すべて土でぬってふさぎました。 そ…
木花之佐久夜比売 9 すると・・・。 「木花之佐久夜比売よ。私は、あ なたとは一晩しか一緒にすごして いません。だから、お腹のこども は、私のこどもではありません。 あなたが以前につきあっていた国 津神のこどもではありませんか」 邇邇芸命は、冷やや…
木花之佐久夜比売 8 次の朝。 邇邇芸命は、反乱をくりかえす国 を平定するため、遠くの国へ旅立 っていきました。 二人が一緒にすごしたのは、たっ た一晩だけだったのです。 しばらくして、邇邇芸命が旅から 帰ってきました。 「邇邇芸命さま、お帰りなさ…
木花之佐久夜比売 7 こんな願いをこめて、私は二人の 娘をさしあげました。でも、邇邇 芸命さまは、木花之佐久夜比売だ けを妻にしました。だから、邇邇 芸命さまの命は、桜の花が散るよ うにはかなく散ってしまうでしょう」と。 そんなわけで、現在に至る…
木花之佐久夜比売 6 邇邇芸命は、石長比売を大山津見 神の元へ送り返しました。 大山津見神は、残念に思いました。 そして、自分の気持を使者に伝え ました。 「私が娘二人をさしあげたわけは、 石長比売を妻にすれば、邇邇芸命 さまの命は、岩のように永遠…
木花之佐久夜比売 5 すると。 大山津見神はたいそう喜び、「姉 の石長比売も一緒にもらっていた だけないでしょうか」といいました。 そして、二人の娘とともに、たく さんの宝物を台車にのせ、邇邇芸 命に贈りました。 石長比売をみた邇邇芸命は、驚き ま…
木花之佐久夜比売 4 邇邇芸命はやしきへ戻ると、早速 木花之佐久夜比売の父・大山津見 神に、使者をおくりました。 「私は、邇邇芸命のつかいのもの です」 「邇邇芸命さま?」 「邇邇芸命は、高天原の天照大御 神さまの孫でございます」 「どんな要件でし…
木花之佐久夜比売 3 「突然ですが、私の妃になってい ただけませんか」 「えっ、妃に? たった今、お会 いしたばかりですよ。それに、あ なたの名前も知りませんし」 「失礼しました。私は、邇邇芸命。 高天原にいる天照大御神の孫 です」 「天照大御神さま…
木花之佐久夜比売 2 すると・・・。 木花之佐久夜比売は、はずかしそう に下をむいてしまいました。 「兄弟は何人ですか」 「姉が一人います」 「名前は?」 「石長比売(いわながひめ)といい ます」 「石長比売だなんて・・・変な名前。 美人なのだろうか…
木花之佐久夜比売 1 ある日。 邇邇芸命が、笠沙の岬を歩いている と、向こうから娘がやってきました。 はっとするほど美しい娘でした。 邇邇芸命は、その娘に一目ぼれ。 「あなたの名前は?」 「私は、大山津見神の娘で、神阿多 都比売(かむあたつひめ)。…