2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

火とぼし山

第一章 次郎、西の村へ 1 信州の諏訪に、美しい湖がありま した。 湖の名前は、諏訪湖。 「おみわたり」として有名な湖で した。 「次郎さん。みて、白鷺よ」 「白鷺?」 「ほら、あそこ」 きよが、諏訪湖の上空を指さしま した。 白鷺が二羽、西山にむかっ…

竹取物語

帝、不死の薬を高い山で焼く 4 勅使の調(つき)の岩笠を呼び、 駿河の国にある山の頂きに、壺 と手紙を持っていくように、命令 しました。 帝は、その山頂ですることを、勅 使に教えました。 不死の薬の壺と手紙を並べて、 火をつけ燃やすようにと、命令 …

竹取物語

帝、不死の薬を高い山で焼く 3 「天に一番高い山は、どの山じゃ」 帝は、大臣たちに聞きました。 すると、ある人が、 「駿河の国にある山が、都にも近く、 天にも近いといわれています」と答 えました。 帝が、歌を詠みました。 あふこともなみだにうかぶ我…

竹取物語

帝、不死の薬を高い山で焼く 2 中将は、翁の家に派遣された二千 人を引き連れ、御殿に帰りました。 そして、月の都の人たちと戦ったが、 かぐや姫をひきとめることができな かったとを、帝に報告しました。 そして、不死の薬が入っている壺 と、かぐや姫の…

竹取物語

帝、不死の薬を高い山で焼く 1 かぐや姫が、月に帰ってしまった 後、おじいさんとおばあさんは、 毎日泣いています。 二人がどんなに泣いても、かぐや 姫が月から帰ってくるわけではあ りません。 二人のことを心配した人たちは、 かぐや姫が残した手紙を読…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 19 そして、帝に献上するようにと、頭 中将を呼び依頼しました。 中将が、壺を受け取ったので、天 人がかぐや姫に天の羽衣を着せ ました。 すると、ふしぎなことに、悲しい気 持やなごりおしい気持が、かぐや 姫の心からすっ…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 18 「このように、おおぜいの兵士を、 派遣していただきありがとうござ いました。みんなで、月からの迎 えをとめていただきましたが、月 から迎えがきて、これから月に帰 ります。 くやしくそして悲しいです。帝のお そばに…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 17 そして、天の羽衣を取り出し、無 理やり姫に着せようとしました。 「ちょっと待ってください。天の 羽衣を着ると、心が変わってし まいます。ひとこといっておか なくてはならないことがあります」 「姫、早くしなさい」…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 16 天人が持っている箱の中には、天 の羽衣が入っています。 また別の箱には、不死の薬が入っ ていました。 「さあ、姫。壺に入っている薬を飲 みなさい。穢れた地上の物をたく さん食べたから、気分が悪いこと でしょう」と…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 15 「私が、人間の国に生まれていた ならば、二人といつまでも一緒に 暮らせたでしょう。ほんとうに残念 です。私が着ていた着物を、形見 に置いていくのでみてください。 月がでた夜は、月をながめてくだ さいね。大切に育…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 14 「なぜ見送りをしなくてはならな いのだ。悲しくて、見送りなどで きない。なぜじいを捨てて、月へ 帰ってしまうのか。じいも一緒に 連れていっておくれ」 おじいさんが泣いている姿をみて、 かぐや姫はとほうにくれまし…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 13 屋根の上に、かぐや姫が乗る車を 寄せると、天人がいいました。 「さあ、かぐや姫。こんな穢れた 所に、なぜ長い間いるのですか。 出てきなさい」と。 姫を閉じこめてあった塗籠の戸も、 自然に開いてしまいました。 おば…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 12 姫は、月の都で罪をおかしたので、 賤しいおまえの所に住むようにな ったのじゃ。姫の罪の償いの期間 が終わったので、姫を迎えにきた。 おまえは、泣き悲しんでいるが、 今更どうすることもできない。早く 姫をだしなさ…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 11 その中にいた王が、「翁、でてこ い」と、いいました。 猛々しく構えていたおじいさんは、 その声を聞くと、何かに酔ったよ うになり、うつぶせに伏してしま いました。 月の王が、おじいさんに、 「おまえは、未熟者だ。…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 10 気持をふるいおこし、弓をひこう とするけれど、手に力がはいりま せん。 気丈な者が弓を射ようとするが、 矢がとんでもない方向へとんでい ってしまいます。 どの人もぼんやりして、お互いに 顔をみあわせるばかりでした…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 9 こうしているうちに、宵もすぎ、 夜中の十二時になりました。 家のまわりが、昼間より明るく 光り輝きました。 満月の明るさを、十も合わせた ような明るさで、人の顔の毛穴 さえみえるほどの明るさでした。 大空から、雲に…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 8 二人に心配をかけてしまったこと が悲しいです。月の都の人たちは、 すばらしい人ばかりで、老いるこ とがありません。悩み事もありま せん。そんないい所へ帰ろうとし ているのに、私は少しもうれしく ありません。 二人が…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 7 「じい、そんな大きな声を出さない でください。屋根の上にいる兵士 たちに聞かれたらはずかしいです よ。大切に育てていただいたのに、 月に帰ってしまうことは、ほんとう に残念です。 前世からの宿縁がなかったため に、…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 6 それを聞いた、かぐや姫が。 「戸をしめて、戦う準備をしてい ても、月の国の人たちとは戦うこ とはできません。弓矢でも、月の 人たちを射ることはできないでし ょう。 たとえ鍵をかけてあっても、月の 国の人たちがくれば…

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帝、かぐや姫の昇天を確かめる 5 「こんなにおおぜいの人で、かぐ や姫を守っているのだから、月の 国の人たちに負けるはずはない。 ちょっとでも、空を何かが飛んだ ら、殺してくれ」と。 「蝙蝠一匹でも飛んだら、さっと 殺し、みせしめのため外にさらし …

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 4 使用人たちも、兵士と同じように、 弓矢を持ち武装しています。 兵士の一部を屋根からおろし、家 の中にいるかぐや姫も守りました。 おばあさんは、塗籠の中で、かぐ や姫を抱いて座っています。 おじいさんは、塗籠の戸に…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 3 使者は御殿に帰り、帝に報告しま した。 「かぐや姫を、ひとめみただけで も忘れることができないのに、長 い間かぐや姫と暮らした翁は、ど んな気持でいるのだろう」と、心配 しました。 八月十五日。 帝は、それぞれの役…

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 2 「かぐや姫が、月をみて、物思い にふけっているといううわさは、本 当か」 使者が聞きました。 すると、おじいさんが、 「今月の十五日に、月の都から、 かぐや姫を迎えにきます。十五日 に、月の都の人たちを捕まえるた …

竹取物語

帝、かぐや姫の昇天を確かめる 1 「かぐや姫が、月に帰る」という うわさを聞いた帝は、竹取りのお じいさんの家へ使者を送りました。 おじいさんは、使者に会い、「娘 は、八月十五日に、月へ帰ってし まいます」といい、泣いています。 おじいさんは、姫…

竹取物語

帝のお召しに応じないかぐや姫 22 むしろ、悲しい気持でいっぱいで す。でも、月の国へ帰ってきなさ いと命令されれば、いやでも帰る よりしかたがありません」 姫は、おじいさんとおばあさんと 一緒に泣きました。 使用人たちも、長い間、優しい姫 と暮ら…

竹取物語

帝のお召しに応じないかぐや姫 21 おじいさんが泣くのをみて、姫は どうしたらいいのかわかりません。 「月の国には、私の父も母もいま す。わずかな間だけといって、月 の国からやってきました。でも、こ の国で、長い年月がすぎてしまい ました。 月の国…

竹取物語

帝のお召しに応じないかぐや姫 20 今月の十五日に、月の国から迎 えにくることになっています。私 は、月に帰らなくてはならないの です。二人がこのことを知ったら、 悲しむだろうと思い、この春以来、 悩んでいました」 そういって、姫ははげしく泣きま …

竹取物語

帝のお召しに応じないかぐや姫 19 「姫、どうした」 おじいさんとおばあさんが、かぐや 姫に聞きました。 かぐや姫が、泣きながらいいました。 「前々から、私が泣いている訳を話 そうと思いましたが、話すと二人が 悩むと思い、今まで話せませんでし た。…

竹取物語

帝のお召しに応じないかぐや姫 18 姫は、月が出ると、縁側に座り、 ためいきをついています。 月が出ていない時は、物思いにふ けっている様子はありません。 姫は、月が出る時刻になると、時 々ためいきをつき、泣いています。 「まだ姫さまは、悩み事が…

竹取物語

帝のお召しに応じないかぐや姫 17 しばらくして、またおじいさんが 姫の様子を見に行くと、まだ物 思いにふけっているようでした。 「大切な姫よ、何を思い悩んで いるのかね。悩み事は何かな」 「悩み事は、何もありません。 ただ、月を見ると、何となく…