2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧
逢ひたき人思へば大方世に在さず 面影を偲ぶのみとなりたり
脇芽さし苗を作りしフルーツトマト 成長良くて赤く熟れ来ぬ
わが庭の山椒に生れし揚羽蝶 今日もきたりて廻りを遊ぶ
種にせむととり残し豌豆を 山鳩の番今朝も啄む
己が幸を人の物差しで計るなと 兄の言ひしが心に残る
青い芥子見むと上り行く狭き道 車窓に青葉の時折すれ合ふ
幻の花とふ青い芥子の花 見たしと思ひ居て今日叶ひたり
新しく土竜の上げし土踏みて 蜀黍の根元に土寄せをなす
梅雨の雨に百余り咲く額紫陽花 其処のみ暮れず夕べ明るし
ビール工場に人影のなく機械のみ 動きて次々箱に詰めらる
手作りの布の草履は素足に優し 好みて日々に厨にはきぬ
田の土手を忽ち刈りゆく草刈機 たんぽぽの絮毛しきりに飛びゆく
萌え立ちし夕菅の枝ほしげなく 友堀り呉れぬ花の待たるる
苦土石灰蒔きて起こしし黒土より 冬眠の蛙出でて動かず
亡き夫や子等の通ひし道への近道 舗装せぬ土の感触のよし
答へなき答へを求め夫の遺影に 向ひて居れば心安らぐ
アカシヤの咲き始めし谷明るくて 天麩羅にせむ一枝をもらふ
和紙を折り友等と作りし内裏雛 表情異なりどれも愛らし
亡き母が吾等の着物縫ひ呉れし 鯨尺今も艶良く残る
幻想的な白煙を残し山崎さん乗る シャトルは空へ吸ひ込まれゆく
一冬を軒下に置きし青葱の 細りし枯葉夕風に鳴る
亡き父が体弱き吾に鳥の骨 叩き呉れし団子忘れず
北海道の土産に貰ひしラベンダーの 枕寝返る床に香りぬ
長野原の江戸初期よりの伝統行事 お日待ちのむすび今年も届く
広告紙巻きて編みたる花籠に 紅絹に作りし薔薇を飾りぬ
欠席の友に歌稿を持ち行く道 どんどに焼けし笹の葉散りぼふ
ベランダの屋根よりずれて見えし雪 ドスンドスンと間をおきて落つ
軒下のつらら溶けつつ節分の 温き日差しに煌めき止まず
夜なべとふ言葉懐かし炬燵辺に 物縫ふ母の姿の浮かぶ
母に吾がなしし如くに娘が 吾の沢庵に切れ目入れてくるるも