2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧
新聞の活字が今日より十四段 十二字となりて老眼鏡要らず
自分勝手で思ひやりのなき人の方が 体に良しとぞ苦笑して聞く
脱サラの君の拓きし羊牧場 百頭の群れに秋日あまねし
ビニール袋にとり来し蝗ピチピチと 車の中に音立て跳ねる
母の味思ひ出しつつとりて来し 蝗佃煮にすればまこと香ばし
茜の空川面にうつす天竜川 事一つ終へし安らぎに見る
アララギの崩壊の後まぼろしとなり アラカシを藤原京跡に見る
襲ひくるやぶ蚊払ひつつ酒船石を 遠つ世の人等偲びつつ巡る
初めて仰ぐ天の香久山山と言ふより 台地のごとく低く平らに
亡き兄が色黒で足の長き吾に つけたる渾名は足長蜂なり
君の歌集「合歓咲く峡」の背文字は 知至先生の懐しき遺筆
久々に来たりし古里の小学校 掲げる額の校歌を唄ふ
蜀黍の粒の列すべて偶数と 初めて知りて数へ確かむ
農家の人等砕きし西瓜広大なる 畑に赤き縞模様に見ゆ
季ならぬ雹にあひたる農家の人 収穫前の西瓜を砕く
年々に抜き捨てて絶ゆることなき 十薬の花ひそやかに咲く
設備良き介護施設を見学し 老ゆる侘しさ心に沁みぬ
ヒムロやめ新アララギのみに学ばむと 心決まれば己励ます
梅雨に入れば籠りてちぎり絵に励まむと 爪を伸ばして和紙を揃へぬ
江戸末期より百四十年ぶりとふ皆既月食 今宵古里の山の空に見る
今世紀終に仰ぐ皆既月食か 南アルプスの空にかけ初めたり
古里の神の峰を照らし居し満月の 刻々とかげり見えなくなりぬ
月明りに仄白く見ゆるカモミール 摘みて今宵の風呂に浮かしぬ
ひたすらに蚕飼にいそしみし父母思ひ 桑喰む音の蚕しぐれ聞く
この貝殻同じ模様のなしと聞く 浅蜊はふつふつと口開け匂ふ
亡き兄が吾につけたる渾名なる 足長蜂に今年も出会ふ
痴呆の妻を残して死ねぬと優しき君は 四種類の薬のみつつ看とる
種子散りて生えたる稚きをだまきに 心使ひて庭の草とる
干しえびに茶葉胡麻海苔を粉にせし 手作りふりかけ旨しともうまし
リマ市に生れ理麻と名付けし孫娘 優しく育ち成人式を迎ふ