2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

母の短歌集

打ち込めるものある幸を思ひつつ 曾孫に送らむ吊し雛縫ふ

母の短歌集

梅雨の晴れ間草とる庭に風出でて ローズマリーの香漂ひて来ぬ

母の短歌集

初どりのアスパラガスを手折る音 雨の上がりし畑に心地良し

母の短歌集

福島の七千戸の農家が米作付け 禁止となりしと今日は聞きたり

母の短歌集

プライバシーなき避難所に助け合ふ 人等の姿尊く思ふ

母の短歌集

福島より飯田へ逃げ来し人等 吾等の五平餅を美味しと頬ばる

母の短歌集

遠き地のことと思ひしに店頭に トイレットペーパーなしただ驚きぬ

母の短歌集

踏場なき瓦礫の山より親が子を 子が親をさがす姿よ哀し

母の短歌集

満開の桜の花を愛でつつも 被害者思ひ憚るもの

母の短歌集

四十路に老後に備へる言ひ居し娘 五十半ばに逝きてしまひぬ

母の短歌集

夕方になりて漸く通じたる 子の声に安堵し少し落ち着く

母の短歌集

観測史上最大とふ大地震 東日本を襲ひ飯田もゆれる

母の短歌集

病む友が玄関を出れば鳴ると言ふ 器具つけ夫なる君は働く

母の短歌集

病む友の笑顔が見られるうちにとて 夫君は「農娘」を出版されたり

母の短歌集

もうと思ふかまだと思ふか生き方に 差のつく八十五の誕生日

母の短歌集

久々に逢ひに行くから「千の風」にならず 娘よ墓に居てくれ

母の短歌集

我儘を許してくれと八十五迄 気ままな独り暮しを楽しみて来ぬ

母の短歌集

「老いて子に従へ」と言ふ良き訓 守りて吾の心定まる

母の短歌集

現代の魔法の調理器とふシリコンスチーマー 作りし温野菜旨しともうまし

母の短歌集

新幹線南アルートの決定に 飯田の町に祝のポスター

母の短歌集

逝きし娘の庭より移しし杜鵑草 盛り咲けるに時雨降りつぐ

母の短歌集

風無くて初冬の光澄む畑に 土盛り上げし豌豆間引く

母の短歌集

年々に吾より若き友等逝き 賀状の数の減りてゆくなり

母の短歌集

遠き日に覚えし歴代天皇の名 今もすらすら暗んじ得るも

母の短歌集

岐阜蝶の飾りつくこの外灯の 下に待ち呉れし友の幻

母の短歌集

来年も健やかに生くるを信じつつ 合服を仕舞ひ冬服を出す

母の短歌集

神無月下旬と言ふに十センチの 雪に驚く斑尾に来て

母の短歌集

良く成りて食べしゴーヤの柵を崩す 蔓もはっぱもしるく匂ひぬ

母の短歌集

風吹かず慈雨となりたる台風を 喜び今日は大根を蒔く

母の短歌集

猛暑続き一日も早き涼しさを 願ひ居りしに俄かに寒し