女神さまとの約束


   女神さまとの約束 3


黄金色の花が、早くみつかるとよいで
すね。
八ヶ岳の女神より」
手紙には、そう書いてありました。
大雪の夜、福の家に泊まった女の人は、
八ヶ岳の女神さまだったのです。
「やはり、あのかたは女神さまだったのね」
福は、そっとつぶやきました。



 
「とうちゃん。待っていてね。私、八ヶ岳
へ行って、黄金色の花をさがしてくるから」
今にも死にそうな人を、一人残していくこ
とは心配でしたが、黄金色の花さえみつか
れば、とうちゃんが元気になれるかもしれ
ない。 福は、そう思いました。
「あなたの名前は、なんていうの?」
「私の名前は、白駒。福さんと一緒に、黄
金色の花をさがすようにと、女神さまから
いわれました」
「白駒というのね。私と一緒に、黄金色の
花をさがしてくださいね。おねがいします」
福は、白駒にお願いしました。




そして、白駒の背にとびのりました。
白駒は、「ひひーん」と一声なくと、すご
いいきおいで走りだしました。
その早いことといったら。こんなに早く走
る馬を、福は今までみたことがありません。
福はふりおとされないように、白駒にしっ
かりしがみつきました。
白駒は、野をこえ里をこえ、あっという間
に、八ヶ岳の登り口へつきました。




みあげると、ニ千五百メートルくらいのけ
わしい山が、帯のように続いています。
「この山のどこかに、黄金色の花が咲いて
いるのね。どの山に咲いているのかしら?」
「さあ、どの山に咲いているのでしょうね。
女神さまの話では、黄金色の花はぴかぴか
光っているので、おりてさがさなくても私の
背中からみつけることができるそうですよ」
白駒は、いいました。
「黄金色の花が、早くみつかりますように・・・」
福は、心の中で女神さまにお願いしました。




福と白駒は、まず天狗岳からさがすことにし
ました。
天狗岳といっても、赤い岩肌がむきだしにな
った東天狗岳と、山頂まではいまつがはえ
いる、西天狗岳とあります。
西天狗岳は、青天狗岳ともよばれ、からまつ
などの針葉樹林が続き、あちこちに池もあり
ました。




ささの林を通ると、「ヒンカラララ・ヒンカ
ラララ」と、小鳥が鳴いています。 
「白駒、あの鳥は何という鳥?」
「こまどりですよ」 
「こまどり?こまどりの声って、私初めて聞
いたわ。美しい声ね」
「女神さまはね、こまどりやうぐいすの鳴き
声が、大好きなのですよ」
白駒が話してくれました。



      つづく