女神さまとの約束


   女神さまとの約束 6


白駒は、福の家へもどりました。
そして、あっという間に、長者をつれて
もどってきました。
「おお、これが黄金色の花か。美しい花
だね」
長者は、ぴかぴか光っている花をみて、
驚きました。
「とうちゃん、早く手と足を湯の中へ入
れてごらん。体が楽になるから」




長者は、手と足を湯の中へ入れました。
「うーん、気持がいい!!なんて気持が
良いのだろう」
長者は、うっとりした顔でいいました。
福は、長者の体を、花びらでやさしくさす
ってやりました。
どす黒かった長者の顔が、うっすらとピン
ク色になりました。
「とうちゃん。きっと元気になれるよ」
「そうだな。元気になれるかもしれないね」
長者も、うれしそうでした。




長者は、一日ごとに元気になりました。
そして、十日後には、すっかりよくなりま
した。
「さあ、ふく。元気になったから、家へも
どろう」
「とうちゃん。私は、硫黄岳の岩場に残るわ」
「なぜ?」
「私、八ヶ岳の女神さまと約束したの。こ
こにとどまって、とうちゃんのように病気で
苦しんでいる人を助けるって」
「そうか・・・。福は、女神さまとそんな約
束をしたのか。約束は守らなくてはいけない
けれど、福がいないとさみしいね」
長者は、さみしそうでした。
長者は白駒の背にのり、一人で家へもどって
いきました。
福は、女神さまとの約束を守り、硫黄岳の岩
場に一人残りました。




その後。
白駒は、あちこちの村から、病気で苦しん
でいる人をつれてきました。
一人が元気になると、またどこからか次の
病人をつれてきます。
足腰もたたない、今にも死にそうな人を、
白駒がどうやってつれてくるのか、福はふ
しぎに思いました。




福は、白駒がつれてきた人の体を、黄金色
の花びらで、やさしくさすってあげます。
すると、死にそうだった人が、何日かする
とすっかり元気になりました。
早い人は五日くらい、遅い人でも一ヶ月く
らいたつと、元気になって家にもどってい
きました。
ある日。福は、白駒に聞きました。
「白駒。足腰もたたない人を、どうやって
ここへつれてくるの?」
「女神さまのいいつけで、その人の家へ行
くと、女神さまが私の背中に病人をのせて
くれるのですよ」


        つづく