昨日に続き、「硫黄岳に咲いた黄金色の花」を
紹介します。
硫黄岳に咲いた黄金色の花２
夏のある朝。
長者は具合が悪くなり、急にたおれてしまい
ました。暑さのため食欲がなくなり、長者は
日ごとに弱っていきました。
「とうちゃんの病気が、一日も早くよくなり
ますように」
ふくは、八ヶ岳の女神さまに、毎日そうお願
いしました。
「ふくや、わしはもうだめだ。もう長くは生
きられないだろう。わしが死んでも、一人で
しっかり生きていくのだよ」
「とうちゃん。そんなかなしいことをいわな
いで。きっと元気になれるから」
ふくは、長者をはげましました。
とうちゃんが死んでしまったら、私はひとり
ぼっちになってしまう。
そう考えると、ふくはいてもたってもいられ
ません。
「どうか父をたすけてください」
ふくは、ひっしで八ヶ岳の女神さまにお願い
しました。
次の朝。
「とんとん、とんとん」
玄関の戸をたたく音がしました。
「こんなに早く、誰だろう？」
ふくは、玄関へでてみました。
すると・・・。
白い馬が立っています。雪のように白い馬で
した。馬は、口に手紙をくわえていました。
「誰からの手紙だろう」
ふくは、いそいで手紙をよみました。
「私は、八ヶ岳の女神です。大雪の夜、あな
たに助けていただいた者です。
おぼえていますか。あなたは、本当に心のや
さしい娘ですね。私が、あなたのおとうさん
を助けてあげましょう。
この白い馬に乗って、黄金色の花をさがしな
さい。黄金色の花は、八ヶ岳のどこかに咲い
ています。
黄金色の花がみつかったら、おとうさんをそ
の場所へつれていき、養生させなさい。そう
すれば、おとうさんはじきによくなるでしょう。
おとうさんが元気になったら、その花が咲いて
いる場所で、体の悪い人をなおしてあげてほし
いのです。
どんなことがあっても、けっして黄金色の花が
咲いている場所を離れてはいけませんよ。
花が咲いている場所で、体の悪い人をなおして
あげてくださいね。八ヶ岳の女神より」
手紙には、そう書いてありました。
つづく
この物語は、諏訪地方に伝わっている「白駒池」
の伝説をヒントにして、みほようこが書いた物語
です。読んでくださいね。
