大国主命さま・明神さまとのであい


大国主命さま・明神さまとのであい」の章


かなは、五年生になりました。
五月の連休に、諏訪の校長先生の家を訪ねました。
「かな、よくきたね。待っていたよ」
校長先生と奥さんは、うれしそうにかなを迎えて
くれました。



校長先生に案内され、かなは諏訪大社の本宮へ行
きました。
鳥居をくぐると、小さな社がありました。
すると・・・。
校長先生が、大きな声で歌いはじめました。
「大きな袋を肩にかけ、大黒さまがきかかると」と。
「先生、その歌、大黒さまの歌でしょ」
「かなはよくこの歌を知っているね」
「幼い時、とうちゃんが毎晩この歌を歌いながら、
いなばの白うさぎの話をしてくれたの。
とうちゃんは、やまたのおろちの話もしてくれたわ」
「そうか、そうだったのか。かなは、幼い時から、大
国主命やすさのおのみことのことを知っていたのだね」
かなから話を聞いた校長先生は、驚きました。



校長先生とかなは、社の前で大黒さまの歌を歌いました。
歌を歌っていると、なくなったおとうさんのことがなつ
かしく思い出されました。
「かな、どうしたの」
「なくなったとうちゃんのことを思い出していたの」
そういって、かなはそっと涙をふきました。
「かなのおとうさんは、やさしいおとうさんだったのだ
ろうね」
「とうちゃんは、とてもやさしい人だったわ。校長先生
にそっくり」
「私は、やさしくないけれどね」
「校長先生は、とてもやさしいわ。
私、校長先生と会えて、本当によかった」
「私も、かなとこの世で会えて、うれしいよ」
校長先生は、にっこりしながらいいました。



大国主命はね、この神社の祭神であるたてみなかた
のみことのおとうさまなのだよ。
たてみなかたのみことは、明神さまとよばれているの
だよ」
校長先生は、諏訪の神様についていろいろ教えてくれ
ました。
二人が本殿へお参りした時、どこからか鈴の音が聞こ
えてきました。
「リーン・リーン・コロンころん」
「リーン・リーン・コロンころん」と。
美しい音色でした。


         つづく



この話は、みほようこの三冊目の本・「ふしぎな鈴」
のつづきとして書きました。


童話「ふしぎな鈴」は、昨年九月、
http://www.choeisha.com/から、
発行されました。



ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)