笛の音よ、永久にひびけ

初めてのかたは、昨日の日記を読んでください。


   笛の音よ、永久にひびけ 1

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060227




   笛の音よ、永久にひびけ2


「あの木も、じゃまだぞぉ」
「えーい、めんどうだ。あの木もこの木も、み
んな切ってしまえー」
風にのって、人間たちの声が聞こえてきました。
その声は、なげやりならんぼうな声でした。
「仲間の木が、切られてしまうのだな」
楓は、さみしく思いました。
「まさか、丘の上のわしの所まではこまい」
楓は、安心していました。



ところが・・・。
人間たちが、丘の上までやってきたのです。
「大きな楓だねぇ」
「こんな楓は、みたことがない」
「しかし、楓だけ残しておくわけにもいくまい」
「どうしたら良いだろう」
「切るよりしかたがないだろう」            
こんな声が聞こえてきました。
楓も、仲間の木といっしょに、切られてしまう
ことになったのです。



この丘での楽しかった思い出が、まるで昨日の
ことのように、楓にはなつかしく思い出されま
した。
「とうとう、わしも切られてしまうのか」
楓は、さみしく思いました。
「人間たちは、なぜ森の木を切るのだろう。
森では、木や草や動物たちが、仲良く助け合っ
て暮らしているのに」
楓は、大きなため息をつきました。



「この丘に住んでいる仲間たちは、これからど
うなるのだろう」
楓は、仲間たちのことが心配でたまりません。
「うわさでは、この森でスキー大会が行われる
とか。その会場を作るために、森の木をたくさ
ん切るそうだ。なぜ人間たちは私たちをみごろ
しにするのだろうか」
楓には、人間の気持がわかりませんでした。
「今年は、はっぱをつけることができないかも
しれんのぅ。いつ切りたおされるのだろうか」
楓は、不安な気持で毎日を過ごしました。



「楓のおじさん、この森の木が、みんな切られ
てしまうって、本当?」
リスとかもしかがやってきて、聞きました。
「本当だよ。わしも切られてしまうことになった」
「えっ、楓のおじさんも?」
「ああ・・・わしもじゃ」
「森の木がなくなると、さみしくなってしまうね。


     つづく



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、長野
オリンピックのためにきりたおされた樹齢
200年の楓の物語。



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行される「風の神様からのおくりもの4」
に収録されます。