ライオンめざめる


昨日につづき、童話「ライオンめざめる」を
紹介します。
初めてのかたは、「ライオンめざめる1・2」
を読んでくださいね。



        ライオンめざめる1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060305



        ライオンめざめる2


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060306




        ライオンめざめる3


かなはライオンのロケットを首にかけ、散歩に
行きました。 
丘へつくと、夏の間美しく咲いていた日光きす
げややなぎらんは、すっかり枯れていました。
そして、草原は一面すすきでおおわれていました。



松虫草の花は、まだ咲いているかしら」
かなは、松虫草の花を探して歩きました。
あちこち探しましたが、松虫草の花はなかなかみ
つかりません。
松虫草の花は、もう枯れてしまったのかしら」
かなは、あきらめて家に帰ろうと思いました。
ふと足元をみると、枯草の中に、松虫草の花が十
本くらい咲いていました。
松虫草の花は、秋の日をあび、きらっきらっと美
しく輝いています。
「なんてきれいだろう」
かなは、松虫草の花に見とれていました。



すると・・・。
花のみつをすいにきたのでしょうか。
どこからか、赤いちょうが一匹舞ってきました。
みたことのないちょうです。
松虫草の花の上で、ちょうが大きく羽をひろげた時、
かなは「あっ」と驚きの声をあげました。
そのちょうは、くじゃくの羽のような、鮮やかな色
をした赤いちょうでした。
ちょうの羽には、大きな目玉のようにみえるもよう
がついています。
ちょうをじっとみていると、かなは誰かにみつめら
れているような気がしました。




しばらくすると、あっちの方から一匹、こっちの方
から一匹と、たくさんのちょうが、松虫草のまわり
に集まってきました。
ちょうの数は何百匹、いや何千匹でしょうか。
集まってきたちょうたちは、かなとりゅうのまわり
を、楽しそうにひらひらと舞い始めました。
誰がふいているのでしょうか。
どこからか清らかな笛の音も聞こえてきます。
ちょうたちは、その笛の音にあわせ、楽しそうに舞
っています。



「うーん・・・うーん・・・」
ライオンのうなり声で、かなははっとわれにかえり
ました。
あんなにたくさんいた赤いちょうは、どこをさがし
ても一匹もいませんでした。
「赤いちょうは、どこへ消えてしまったのかしら」
かなは、ふしぎに思いました。
みると、松虫草の花が、何事もなかったかのように、
風でゆれています。



「いたいよぉー・・・いたいよ・・・」


      つづく



童話「ライオンめざめる」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行されるみほようこの童話集・「風の神様から
のおくりもの4」に収録されます。



今、長野ひろかず先生が、挿絵を描いてくださっ
ています。どんな本ができるか、楽しみにしてい
ます。おおぜいのこどもたちに読んでいただきた
いと思います。



今までに発行された「風の神様からのおくりもの」
シリーズ



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)