竜の姿をみた少女


昨日につづき、童話「竜の姿をみた少女」を
紹介します。
初めてのかたは、このページを先に読んでく
ださいね。


   ・  竜の姿をみた少女 1

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060311

  
   ・  竜の姿をみた少女 2

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060312




      竜の姿をみた少女 3    


何を馬鹿なことをいっているのかしら」
「そういえば、かなちゃんのおとうさんも、湖
に竜がいると信じているみたい」
「ほんとにおかしな親子だねぇ」
村の人々は、どの人も「竜なんかいない」と思
っていました。 
でも、かなは「もしかしたら、湖に竜が住んで
いるのではないかな」と思っていたのです。



山深い村にも、ようやくあたたかな春がやって
きました。
湖のほとりでは、空色のいぬのふぐりの花が咲
きはじめました。
かなは、いぬのふぐりの花が大好き。
「かな、この空色の花はね、いぬのふぐりとい
う花だよ。かわいい花だね。空のお星さんが、
草むらでかくれんぼしているような花だね。
いぬのふぐりの花は、きびしい寒さの中で、春
一番に咲くのだよ」
そういって、おかあさんが教えてくれた花でした。



そんな春のある日。
かなは、一人で湖へ行きました
そして、しらかばの木の下で、ぼんやり湖をな
がめていました。
すると・・・。
どこからか、ひそひそと小さな声が聞こえてき
ました。
「誰かしら?」
あたりをみまわしましたが、誰もいません。
耳をすませて聞いていると、どこからかこんな
話し声が聞こえてきました。



「しらかばさん。・・・三郎さまは・・・今年
も・・・この湖へ・・・みえるかしら」
「ああ、みえるとも。・・・三郎さまは・・・
この村が・・・大好きだからね」
「三郎さまは、いつ・・・この湖へ・・・みえる
のかしら」
「湖の氷も・・・とけ始めたし、ぼつぼつ・・・
みえるのではないかな」
とぎれとぎれでしたが、こんな声がどこからか聞
こえてきました。
しらかばといぬのふぐりの花が、話をしていたの
でしょうか。
「三郎さまって、誰のことかしら。竜になった三
郎のことかしら」
かなは、そう思いました。



それから一週間がすぎました。
かなは、また湖へ行き、湖をじっとながめていま
した。
「少女よ、おまえは本当にしらかば湖が好きなん
だね」
ふりむくと、白いひげのおじいさんが立っていま
した。みたことのないおじいさんです。
おじいさんは白い着物をきて、長い杖をついてい
ました。


       つづく


童話「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊
目の童話集・「竜神になった三郎」の続編。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)