竜の姿をみた少女


童話「竜の姿をみた少女」は、みほようこ
二冊目の童話集・「竜神になった三郎」の続
編。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)



一昨日につづき、童話「竜の姿をみた少女」を
紹介します。
初めてのかたは、「竜の姿をみた少女1−3」
を先に読んでくださいね。



   ・  竜の姿をみた少女 1

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060311

  
   ・  竜の姿をみた少女 2

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060312

  
    ・  竜の姿をみた少女 3    

http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060313




      竜の姿をみた少女 4


「わしはのぅ、昔この村に住んでいたものじゃ。
ここはのどかで、本当にいい所じゃのぅ。わし
は兄たちといっしょに、春はわらびやたらの芽、
秋は栗やきのこをとったものじゃ。
あの頃は、本当に楽しかったのぅ」
おじいさんは、昔をなつかしむように、こども
のころの話をしてくれました。




「おじいさん。この湖に、竜が住んでいるという
いいつたえを知っている?」
「ああ、知っているとも」
おじいさんは、大きくうなずきながらいいました。
「じゃあ、おじいさんは、この湖に竜が住んでい
ると思う?」
「さあ・・・、どう・・・じゃろな」
おじいさんは、なぜかこまったような顔をし、口
ごもりました。
おじいさんは、なぜ口ごもったのでしょうか。




その後、かなは湖のほとりで、何度かおじいさん
に会いました。
「知らないおじいさんだけど、どこのおじいさん
かしら。別荘のかたかしら」
かなは、おじいさんのことを、みんなに聞いてみ
ました。
「私、白い着物をきたおじいさんなんて、一度も
会ったことがないわ」
「ぼくもみたことがない」
「この村には、長い杖をついたおじいさんなんて、
一人もいないよ」
どの人も、そういいました。
「じゃあ、私だけがあのおじいさんをみているの
かしら」
かなは、ふしぎに思いました。




そんな夏のある日。
湖のほとりで、またおじいさんに会いました。
「暑いのぅ」
そういって、おじいさんはかなの横にこしをおろ
しました。
「ぴゅー、ぴゅーー」
その時、涼しい風がふいてきました。
「わぁー、いい風!!」
「いい風じゃのぅ」
二人は、同時にさけびました。




「かな、おまえは信じていた人にうらぎられた
ことがあるかな」
「はい、あります」
「その人にうらぎられた時、どう思ったの」
「この人は、なぜ私をうらぎったのだろう。
私は、この人のことを、ずっと信じていたのに
・・・と思ったわ」
かなは、そう答えました。
「わしはのぅ、若い頃、心から信じていた兄た
ちに、うらぎられたことがあるのじゃ。
うらぎられたと知った時、わしはびっくりした。
兄たちは、幼い時からわしをうんとかわいがって
くれた。そんな兄たちが、わしをうらぎるなんて
・・・。


       つづく