童話「竜の姿をみた少女」は、みほようこの
二冊目の童話集・「竜神になった三郎」の続
編。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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昨日につづき、童話「竜の姿をみた少女」を
紹介します。
初めてのかたは、「竜の姿をみた少女1−4」
を先に読んでくださいね。
・ 竜の姿をみた少女 1
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060311
・ 竜の姿をみた少女 2
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060312
・ 竜の姿をみた少女 3
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060313
・ 竜の姿をみた少女 4
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20060315
竜の姿をみた少女 5
兄たちが、なぜわしを湖の深いふちにつきおと
したのか、その時は理由がわからなかった。
心から信じていた人にうらぎられるのは、本当
につらいものじゃのぅ」
おじいさんは、兄たちにうらぎられた時のこと
を思いだしたのか、つらそうな顔をしました。
「おじいさんは、なぜ兄さんたちにうらぎられ
たの」
「兄たちは、わしにやきもちをやいたのじゃ。
わしの妻は、とても美しい人じゃった。姿が美
しいだけでなく、心のやさしい人だったのじゃ。
その上、働き者じゃった。
妻は朝から晩までよく働いてくれた。だから、
兄たちはわしがうらやましかったのじゃろ」
「おじいさんは、兄さんたちにうらぎられた時、
どうしたの?」
「わしは、兄たちにうらぎられたと知っても、
なぜか兄たちをうらんだり、にくんだりすること
ができなかった」
「あんなにひどいことをされたのに、おまえは少
しも兄たちをにくんでおらぬ。なぜじゃ。
わしを助けてくれた神様は、そういったけれど
・・・ね」
「その人を心から信じていれば、どんなにひどい
ことをされても、うらんだり、にくんだりできな
いものだということを、わしはその時知ったのじゃ」
「人を信じるということは、その人の良い所も悪い
所も、すべて認めてあげるということなのだろうね」
おじいさんは、自分にいいきかせるようにそういい
ました。
「それはそうと、おまえはこの湖に竜が住んでいる
と、信じているようじゃのぅ」
「はい、信じています。ともだちも村の人たちも、
竜なんていないというけれど、私はこの湖に竜が住
んでいるのではないかしらと思っています」
「なぜ、この湖にりゅうがいると思うの」
「とうちゃんから、竜になった三郎の話を聞いたか
ら。うちのとうちゃんも、この湖には、竜がいるか
もしれないよって、いっています」
「そうか。おまえはこの湖に竜がいると信じている
のか」
おじいさんは、にっこり笑いながらいいました。
「今日は、おまえにいいものをみせてあげよう。
ちょっと待っていておくれ」
そういうと、おじいさんはどこかへ消えてしまいま
した。
「がばっ」
「がば、がばっ」
遠くで大きな音がしました。
そして、湖に大きな波がたちました。
「なんだろう?」
よくみると、湖のむこうから、竜らしきものが近づ
いてきました。
つづく