竜神になった三郎


十数年前の正月。
夫と共に「諏訪大社」へお参りに行きました。
その帰り、博物館へ寄りました。
諏訪に伝わっている「竜になった三郎」の資料
を探しに行ったのです。



博物館には、諏訪の伝説「竜になった三郎」の
アニメがあります。


    「おっかあー」

    「私のおっかあやーい」



三郎が、恋しい妻をさがして歩く声が、私の耳
に強く残りました。帰宅してすぐ、私は「竜に
なった三郎」の話を書きました。
でも、この時点では、一冊の本にするつもりは
ありませんでした。



それから、数年後。
私は、再び博物館を訪ねました。
そして、再び三郎の声を耳にしました。



その時、「一冊の本にして、おおぜいのこども
たちに読んでもらおう」と思いました。


2004年4月。
七年に一度おこなわれる諏訪大社の「御柱祭
にあわせて、http://www.choeisha.com/
から、「竜神になった三郎」が発行されました。



童話集「竜神になった三郎」は、みほようこ
の二冊目の童話集。






人は信じていた人に裏切られた時、どんな
行動をとるのでしょうか?


ほとんどの人が、怒り狂うのではないでし
ょうか。
そして、自分を裏切った人を憎むのでは・・・。
それが普通の人間だと思います。



でも、「竜神になった三郎」の主人公・三郎
は、心から信じていた二人の兄に、湖の中へ
つきおとされても、なぜか兄たちを憎んだり、
怒り狂ったりしません。


三郎は、幼い時から、二人の兄に「三郎や、三
郎や」といって、かわいがられていました。 
「あそこの兄弟は、ほんとうに仲がよいのぅ」
と、人々からうらやましがられるほど、三人は
仲良しでした。


ところが・・・。
三郎が、美しい心の優しい妻をもらったので、
二人の兄たちは三郎にやきもちをやきました。
そして、幸せいっぱいの三郎を、ぎゃふんとい
わせようと、兄たちは相談します。
あんなに仲のよかった兄弟なのに・・・。



そして、とうとう、兄たちは三郎を湖の中へつ
き落としてしまったのです。
でも・・・なぜか三郎は、ひどいことをした二
人の兄をにくむことができませんでした・・・。



童話集「竜神になった三郎」の中のことばより


「わしは地の国の神じゃ。本当にひどい目にあっ
たのぅ。しかし、おまえはあんなひどい目にあっ
ても、兄たちを少しもにくんでおらぬ。 なぜじ
ゃ。 なぜおまえは兄たちをにくまないのじゃ」
神様は、三郎にたずねました。


私は、こんな人の良い、神様のような三郎を書き
ました。



http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu2.html



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)



昨年暮れ、作太郎さんが「竜神になった三郎」の
レビューを書いてくださいました。


   柵作太郎さんのレビュー


http://d.hatena.ne.jp/asin/4886298281


竜神になった三郎の感想 id:sakurasaku2005 2006/02/10


みほようこ先生の風の神様からのおくりも
のの2作目、竜神になった三郎を読んだ。



物語には作者の人柄や生き様が出るという
が、まさにこの作品はその言葉がぴったり
の作品だと思う。



ときに小さな嫉妬は大きな悲劇を生むこと
がある。
とても仲が良かった兄弟が末弟の三郎がき
れいなお嫁さんをもらった、たったそれだ
けの理由で弟を湖につきおとしてしまう。



三郎と妻の運命は。

この物語の中には夫婦の愛情、正直者の大
切さ、人を恨まないことの尊さが含まれて
いる。



もうひとつのお話は諏訪の守屋山のふもと
の子どものいない朝日長者の話。

福寿草はなぜ生まれたのかを1作目の風の
神様からおくりものとはまた違った形で表
現してある。



どちらの作品にも優しさとちょっぴりした
切なさがある。

読み終わった後、心の中に一陣の風が吹く
ような爽快感と、風が吹いたあとちょっと
体を身震いするような悲しさが感じられる。

みほ先生の渾身作。是非、一読の価値はある
と私は思う。



竜神になった三郎」に 収録されている物語


  ・  竜神になった三郎


  ・  福寿草になった少女