ふしぎな鈴「じいちゃんとばあちゃん」の章


ふしぎな鈴「じいちゃんとばあちゃん」2


おじいさんはあぶら蝉のことをいろいろ教えて
くれました。
みていると、背中がぱかっとわれて、中から蝉
が元気よくとびだしてきました。生まれたばか
りの蝉は、うすい灰色がかった空色をしています。
小さく縮れていたせみの羽が、時間がたつにつれ、
だんだんに伸びてきます。
体の色もうすい茶色に変わってきました。そして
最後には、こい茶色の羽になりました。




かなとおじいさんは、蝉の羽が完全に伸びきるま
で、じっとみていました。
「じいちゃん・・・」
かなは胸がつまり、何もいえませんでした。
「かなもこの蝉のように、おかあさんのおなかか
ら、生まれてきたのだよ」
おじいさんがぽつりといいました。




おじいさんと一緒にみた蝉の羽化は、忘れられな
い思い出になりました。
おじいさんもおばあさんも、花や小鳥が好きな心
の優しい人でした。




かなが五才の時。
おじいさんが病気でなくなりました。
脳こうそくでした。
かなは人の死に初めてであいました。


                 つづく



ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

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