ふしぎな鈴「じいちゃんとばあちゃん」2
おじいさんはあぶら蝉のことをいろいろ教えて
くれました。
みていると、背中がぱかっとわれて、中から蝉
が元気よくとびだしてきました。生まれたばか
りの蝉は、うすい灰色がかった空色をしています。
小さく縮れていたせみの羽が、時間がたつにつれ、
だんだんに伸びてきます。
体の色もうすい茶色に変わってきました。そして
最後には、こい茶色の羽になりました。
かなとおじいさんは、蝉の羽が完全に伸びきるま
で、じっとみていました。
「じいちゃん・・・」
かなは胸がつまり、何もいえませんでした。
「かなもこの蝉のように、おかあさんのおなかか
ら、生まれてきたのだよ」
おじいさんがぽつりといいました。
おじいさんと一緒にみた蝉の羽化は、忘れられな
い思い出になりました。
おじいさんもおばあさんも、花や小鳥が好きな心
の優しい人でした。
かなが五才の時。
おじいさんが病気でなくなりました。
脳こうそくでした。
かなは人の死に初めてであいました。
つづく
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
- クリック: 13回
- この商品を含むブログ (436件) を見る