童話「白駒の池」


    「白駒の池」5


清太は、自分は何をいっているのだろうと思いま
した。長者のおじょうさまが、貧しいおらの家に
遊びにくることなんて絶対ないのに・・・と。
「きよちゃん、座禅草の花ことばを、知っている?」
「知らないわ」
「座禅草の花ことばは、沈黙の愛だって」
「沈黙の愛って?」
「さあ・・・」
清太は、知っていました。
でも、てれくさくて口にだすことができなかった
のです。



二人は、座禅草が咲いている高原を、ゆっくり歩
きました。
目の前には、八ヶ岳の山々がみえます。
「きよちゃん、あの山、何という山か知っている?」
清太は、八ヶ岳の一番高い山を指さしていいました。
八ヶ岳の主峰、赤岳でしょ」
「じゃあ、赤岳のとなりの山は?」
「知らない。清太さん、教えて」
「えーと・・・たしか・・・」
清太は、一生けんめい思い出しています。



権現岳と横岳だったかな」
清太は、天狗岳根石岳・硫黄岳と、山の名前を教
えてくれました。
高い山には、まだ雪が少し残っていました。
「今日は、珍しい花をみることができて、うれしか
ったわ。清太さん、これからも、高原へつれてきてね」


    つづく