童話「女神さまとの約束」


童話「女神さまとの約束」1


昔、むかし、ずぅーと昔。
八ヶ岳のふもとの高原には、おおぜいの女神さまたちが
住んでいました。
八ヶ岳には、黄金のように光る美しい花が咲いている」
そんなうわさが、ふもとの村に流れていました。
「よし、おらが黄金色の花をみつけてやる」
そういって、村の人たちは、八ヶ岳へ登りました。
しかし、黄金色の花をみつけることはできませんでした。



一方、女神さまも、心のやさしい少女を探していました。
でも、女神さまの目にかなう少女は、なかなかみつかり
ませんでした。



八ヶ岳のふもと、中山峠の近くに、さいのかわらという
山深い部落があります。その部落は、茅野から佐久へぬ
ける道すじにありました。
部落には、長者やしきとよばれる大きな家があり、長者
と娘が仲良く暮らしています。
娘の名前は、福。
姿の美しい、父親思いの少女でした。
早くに母をなくした福は、食事のしたくや掃除洗濯など、
家の手伝いをよくやりました。
「福ちゃんは、家の手伝いをよくやるね。えらいね」
村の人々は、そういって福をほめました。



大雪が降った夜のことです。
「とんとん、とんとん」
玄関の戸をたたく音がしました。


                             つづく



童話「女神さまとの約束」は、諏訪地方に伝わっている
話をヒントにして、みほようこが書いた物語。