童話「竜の姿をみた少女」


  童話「竜の姿をみた少女」6


「ああ、知っているとも」
おじいさんは、大きくうなずきました。
「じゃあ、おじいさんは、この湖に竜が住んでい
ると思う?」
「さあ・・・どう・・・じゃろな」
おじいさんは、なぜかこまったような顔をし、口
ごもりました。
おじいさんは、なぜ口ごもったのでしょうか。



その後、かなは、湖のほとりで何度かおじいさん
に会いました。
「知らないおじいさんだけれど、どこのおじ
いさんかしら。別荘のかたかしら」
かなは、おじいさんのことを、みんなに聞いてみ
ました。



「私、白い着物をきたおじいさんなんて、一度も
みたことがないわ」
「ぼくもみたことがない」
「この村には、長い杖をついたおじいさんなんて、
一人もいないよ」
ともだちは、みんなそういいます。
「じゃあ、私だけ、あのおじいさんをみているの
かしら」
かなは、ふしぎに思いました。



夏のある日。
かなは、湖のほとりで、またおじいさんに会いま
した。
「暑いのぅ」
そういいながら、おじいさんはかなの横にこしを
おろしました。
「ぴゅー、ぴゅーー」
その時、涼しい風がふいてきました。
「わぁー、いい風!!」
「いい風じゃのぅ」
二人は、同時にさけびました。



   つづく