かきつばたになった少女


     かきつばたになった少女4


「かきつばた、きすげの花はね、私が少女だった
ころ、大好きだった人から、初めてもらった花なの。
その人は、ふもとの村に住んでいる人間の少年だっ
た。私は、その少年と何度も霧が峰へ行ったわ。と
ても楽しかった。なくなる前に、もう一度きすげの
花がみたいわ」
おばさまは、遠い昔をなつかしむように、そういい
ました。



おばさまの話を聞いたかきつばたは、なんとかして
おばさまの最後の願いをかなえてあげたいと思いま
した。
しかし、女神さまたちは、一人で遠くへでかけるこ
とを、神様からかたく禁じられていました。
そのため、かきつばたは、誰にも行き先をつげず、
たった一人で霧が峰へ行こうと思ったのです。



霧が峰へつくと、広い草原には、きすげの花が、一
面に咲いていました。
「わー、きれい!!」
かきつばたは、思わず大声をあげました。
「おばさまは、この草原を、大好きな人と一緒に歩
いたのね」
かきつばたは、二人の姿を思いうかべながら、夢中
できすげの花をつみました。



ところが・・・。
はっと気がつくと、あたりは霧で真っ白でした。いつ
霧がでてきたのでしょうか。


                         つづく



「かきつばたになった少女」は、みほようこ
の四冊目の本・「ライオンめざめる」に収録さ
れています。
「ライオンめざめる」は、風の神様からのおく
りものシリーズ4。







「ライオンめざめる」は、十月七日、、「鳥影社」
から発行されました。
ヤフーブックス・楽天・アマゾン・ライブドア
紀伊国屋書店ジュンク堂など、インターネット
書店でも、注文できます。




ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

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