かきつばたになった少女


    かきつばたになった少女6


「こんにちは。すごい霧だったね」
少年が、にこにこしながら近づいてきました。
「こんにちは。すごい霧でびっくりしたわ。もう
家に帰れないのではないかと思ったわ」
かきつばたは、ほっとした顔でいいました。
「みかけない顔だけれど、きみ、どこからきたの?」
「あの山の向こうからよ」
「きみの名前は、なんていうの?」
「かきつばたといいます」
「えっ、かきつばた?」
少年は、驚いたような顔をしました。



「美しい少女だと評判の、あのかきつばたさんなの?
おらは、かきつばたさんに会えるのを、ずっと楽しみ
にしていたんだよ」
少年は、うれしそうにいいました。
「あなたの名前は、なんていうの?」
「おらの名前は、山彦」
「山彦?じゃあ、狩が上手で、足が早いという、山彦
さんなの?」
「そうだよ。おらがその山彦さ」
山彦は、大きくうなずきました。
山彦のことは、女神さまたちの間でも、うわさになっ
ていました。


                       つづく



「かきつばたになった少女」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ています。


「ライオンめざめる」は、十月七日、「鳥影社」
から発行されました。



http://www.choeisha.com/



鳥影社 新刊情報

http://www.choeisha.com/sinkan.htm



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ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

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