かきつばたになった少女


かきつばたになった少女15


山彦は、かきつばたの花が咲く頃、八島の湿原へ
かきつばたに会いに行きます。
そして、一日中かきつばたと一緒に過ごすのでした。



かきつばたがなくなってから、ニ千年の月日がすぎ
ました。
夏になると、八島の湿原には、何百本ものかきつば
たの花が咲きます。
かきつばたがなくなった後、二度とこんな悲しいで
きごとがおきないように、神様のいいつけで、女神
さまたちは八ヶ岳のふもとの村を去りました。
そして、女神さまたちはあちらの国でくらすように
なりました。



夏になると、女神さまたちはかきつばたに会いに、
八島の湿原にやってきます。
「かきつばたは本当に美しい少女だったけれど、花
になってもやっぱり美しいのね」
そういいながら、女神さまたちはかきつばたの花を
めでるのでした。



沼のほとりにただずみ、かきつばたの花をみていると、
「山彦さーん、山彦さーん」という、かきつばたの声
が聞こえてくるそうです。
紫色の花になったかきつばたは、今も山彦と一緒に草
原を走りまわっているのでしょうか。


        おわり


「かきつばたになった少女」は、みほようこの四
冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録され
ています。


「ライオンめざめる」は、風の神様からのおくり
ものシリーズ4。
今年十月、「鳥影社」から発行されました。



ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))