竜の姿をみた少女


     竜の姿をみた少女7


それから、一週間がすぎました。
かなは、またしらかば湖へ行き、ぼんやり湖をなが
めていました。
「少女よ。おまえは、ほんとうにしらかば湖が好き
なんだね」
ふりむくと、白いひげのおじいさんが立っていました。



みたことのないおじいさんです。
おじいさんは、白い着物をきて、白い頭巾をかぶって
いました。上品なおじいさんでした。
おじいさんは、長い杖をついています。杖の頭には、
竜の顔がついていました。



「わしはのぅ、昔この村に住んでいたものじゃ。ここ
は、のどかでいい所じゃのぅ。わしは、この村が大好
きじゃ。だから、ときどきここへ遊びにくる。わしは、
兄たちといっしょに、春はわらび、秋は栗やきのこを
とったものじゃ。あのころは、楽しかったのぅ」
おじいさんは、昔をなつかしむように、こどものころ
の話をしてくれました。



「おじいさん。この村に、竜が住んでいるといういい
つたえを知っている?」
「ああ、知っているとも」
おじいさんは、大きくうなずきました。
「じゃあ、おじいさんは、しらかば湖に竜がいると思
う?」
「さあ・・・どう・・・じゃろな」
おじいさんは、なぜかこまったような顔をし、口ごも
りました。


    つづく



「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)



湖につき落とされた三郎が、地の神に助けられ、心
のやさしさゆえに、竜神となる表題作ほか、守屋山
の明神様にまつわる、福寿草と少女の話を収録。
信州諏訪の風の神様から聞いた話をまとめた第2弾。


    ・  竜神になった三郎

    ・  福寿草になった少女



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