福寿草になった少女


福寿草になった少女5


「まさか・・・・・・」
おくさんも鈴を手にとり、ふってみました。
「リーン・リーン・リーン」
清らかな音色が、あたりにひびきました。
「なんで、こんなかわいい子を、おきざりにす
るのじゃ」
「きっとわけがあったのでしょう。こんなかわ
いい子ですもの、おかあさんだって、てばなし
たくなかったでしょうに」



かわいいこどもをてばなすなんて、こどもの授
からない夫婦には、考えられないことでした。
「それにしても、かわいい子じゃのぅ」
長者はなれない手つきで、そっと女の子をだき
あげました。



           
女の子は長者の顔をみて、にっこりほほえみ
ました。
「おう、おう。よい子じゃのぅ」
長者は目を細め、女の子をあやします。
「ねぇ、私にもだかせて」
奥さんは女の子を受けとると、やさしくほおず
りしました。
すると、お乳の甘いかおりが、ぷーんとしました。
女の子はつぶらなひとみで、じっと奥さんの顔を
みています。


                       つづく


童話「福寿草になった少女」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収録され
ています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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