クロッカス白


「花のほほえみ」より  クロッカス白




ギリシャ神話には、クロッカスにまつわる
こんな話があります。


クロッカスという名前の、美しい娘がいました。
クロッカスは、伝令の神・ヘルメスの恋人でした。



雪の降ったある日。
クロッカスとヘルメスは、山へソリ遊びにでかけ
ました。
山は、一面銀世界。
二人は、時のたつのも忘れ夢中で遊びました。



はっと気がついた時には、すでに夕暮れ。
風も吹き始めました。
二人は、急いで帰り支度を始めました。
まずクロッカスをソリに乗せ、ヘルメスが乗ろ
うとした瞬間、強い風が吹きました。



なんと、クロッカスだけを乗せたソリが、谷底
めがけて滑り落ちて行きます。
ヘルメスは、あわてて追いかけました。
しかし、追いつけません。
ヘルメスは、とうとうクロッカスを見失ってし
まいました。



ヘルメスは、ひっしでクロッカスを探しました。
しかし、どこにもクロッカスの姿はありません。
疲れ果てたヘルメスが、谷底でみたもの、それ
はバラバラのソリと、白い雪を真っ赤な血で染
めたクロッカスの姿でした。
クロッカスは、すでになくなっていました。



次の年の冬。
諦めきれないヘルメスは、愛しいクロッカスがな
くなった谷に行きました。
なんとそこには、美しい花がたくさん咲いていたの
です。
ヘルメスは、この花に「クロッカス」と名前をつけ
ました。