竜神になった三郎12
三郎の頭の中には、兄たちとの楽しかった思い出が、
次々と浮かびました。
山でわらびやたらの芽、あけびや栗を取ったことが、
昨日のことのようになつかしく思い出されました。
「おっかあ、助けてくれー。おっかあ、おれはまだ
死にたくなーい」
「お願いだー。誰か助けてくれー」
三郎はひっしでさけびました。
しかし、広い湖には誰もいません。
泳ぎのうまい三郎でしたが、落ちた所が強くうずを
まいている所だったのでたまりません。
もがけばもがくほど、三郎の体は、ずるずるーと、
うずの中にすいこまれてしまうのです。
ひっしにもがいていた三郎も、いつしか力つき、深
い湖の底へ沈んでしまいました。
どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
「気分はどうじゃ。気がついたかな」
その声で、三郎ははっと目がさめました。
三郎は、広い部屋の中で寝ていました。
そばには、長いひげのおじいさんが立っていました。
つづく
「竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の童話集・
「竜神になった三郎」に収録されています。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2004/04
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