竜神になった三郎


   竜神になった三郎12


三郎の頭の中には、兄たちとの楽しかった思い出が、
次々と浮かびました。
山でわらびやたらの芽、あけびや栗を取ったことが、
昨日のことのようになつかしく思い出されました。




「おっかあ、助けてくれー。おっかあ、おれはまだ
死にたくなーい」
「お願いだー。誰か助けてくれー」
三郎はひっしでさけびました。




しかし、広い湖には誰もいません。
泳ぎのうまい三郎でしたが、落ちた所が強くうずを
まいている所だったのでたまりません。
もがけばもがくほど、三郎の体は、ずるずるーと、
うずの中にすいこまれてしまうのです。
ひっしにもがいていた三郎も、いつしか力つき、深
い湖の底へ沈んでしまいました。




どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
「気分はどうじゃ。気がついたかな」
その声で、三郎ははっと目がさめました。
三郎は、広い部屋の中で寝ていました。
そばには、長いひげのおじいさんが立っていました。


つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の童話集・
竜神になった三郎」に収録されています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)