竜神になった三郎13
「わしは地の国の神じゃ。本当にひどい目にあった
のぅ。しかし、おまえはあんなひどい目にあっても、
兄たちを少しもにくんでおらぬ。
なぜじゃ。なぜお前は、兄たちをにくまないのじゃ」
神様は、三郎にたずねました。
「私は幼い時から、太郎兄さんにも次郎兄さんにも、
かわいがってもらいました。兄たちがなぜあんなひ
どいことをしたのか、私にはわかりません。
兄たちにつきおとされた時は、本当にびっくりしま
した。しかし、私は兄たちをにくむ気にはどうして
もなれません」
三郎はそう答えました。
「おまえは本当に不思議な男じゃのぅ。そうだ、お
まえを地の国の王子にしてあげよう」
「えっ、私が地の国の王子ですって?」
「そうじゃ。人を少しも疑うことを知らないおまえを、
この国の王子にしてあげよう。じつは王様にはあとつ
ぎがなくて、困っていた所じゃ。
これからおまえは、この国でのんびりと暮らすがよい」
そういうと、神様はどこかへ行ってしまいました。
つづく
「竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の童話集・
「竜神になった三郎」に収録されています。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
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