竜神になった三郎


    竜神になった三郎14


「いやー、困ります。私には妻がいます。私の帰り
を、妻は今か今かと待っています。
私はどうしても家に帰らなくてはなりません」
三郎は大声でさけびました。



しかし、神様は三郎のいうことなど聞いてくれませ
んでした。
そして三郎は、いやおうなしに地の国の王子にされ
てしまったのです。



地の国では、山奥の村ではみたこともない美しい花
が、たくさん咲いていました。 
その花のまわりを、赤・黄・紫・白など、たくさん
のちょうが、ひらひらと舞っています。
木の枝では、色鮮やかな小鳥が、チィチィと楽しそ
うにさえずっていました。



三郎のまわりにいる女性は、おっかあのように美し
い人ばかりでした。
食事の時間になると、毎日おいしい料理が、次から
次へと運ばれてきます。
地の国は、楽園そのものでした。
しかし、三郎は毎日妻のことばかり考えていました。
「早く家に帰りたい。おっかあはどんなに心配して
いるだろう」
そう思うと、三郎はいてもたってもいられません。



つづく



竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の童話集・
竜神になった三郎」に収録されています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)








    ー わが家のBlogPet「ryuu」の句 ー