女神さまとの約束1
八ヶ岳のふもと、佐久の中山峠の近くに、
さいのかわらという山深い部落があります。
部落には、長者やしきとよばれる大きな
家があり、長者と娘が仲良くくらしてい
ました。
娘の名前は、ふく。
父親おもいの、やさしい少女でした。
「ふく。ただいま」
「とうちゃん。おかえりなさい。外は寒
かったでしょ」
「外は寒いね。ふく。また、雪が降って
きたよ」
「また雪?」
「大雪にならなければいいが・・・」
そういって、長者は、いろりのそばへす
わりました。
「とうちゃん。お茶」
「ありがとう。ふくがいれてくれるお茶
は、おいしいね」
長者は、うまそうにお茶を飲みました。
ちらちら降っていた雪も、いつのまにか
ぼたん雪にかわりました。
雪は、どんどん積もっていきます。
庭も畑も山も、雪で真っ白になりました。
そして、夕方には、吹雪になりました。
つづく
童話「女神さまとの約束」は、信州の佐久
地方に伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。