ふしぎな鈴「朝顔のエスカレーター」


ふしぎな鈴「朝顔エスカレーター」1


それから一年後。
残暑の厳しい九月五日のことでした。
大好きなおとうさんが、心臓病で急になく
なってしまいました。
しんきんこうそくでした。



「かな、おじいちゃんとおばあちゃんに、
かわいがってもらったことを、いつまでも
忘れないようにね。元気で明るく生きてい
くのだよ」
おとうさんはいいました。



そして、桃の実の形をした鈴を、かなにく
れました。
「リーン・リーン・コロンころん」
なんともいえないいい音がします。



「この鈴はね、鎌倉の和尚さんからいただ
いた鈴だよ。この春、丘へ桜を見に行った
時、小桜姫の話をしてあげたね。
おぼえているかな? この鈴は、小桜姫が
大切にしていた鈴の一つだよ。



小桜姫はね、二つの鈴を大切にしていたの
だよ。もう一つの鈴はね…」
ここまで話すと、おとうさんは安心したの
か、かなの手をしっかりにぎりました。  


          つづく



ふしぎな鈴」は、みほようこの三冊目の本。


リーン・リーン・リーン…。
500年の時をへて、心やさしい小桜姫と
現代の少女を結ぶ、美しい鈴の音が聞こえる。
信州諏訪の「風の神様」が、そっと教えて
くれたお話。



「ふしぎな鈴」は、2005年9月、
「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。








http://www.bk1.jp/product/02593627