かきつばたになった少女


   かきつばたになった少女4


おばさまは、おとうさんの妹。
心のやさしい美しい人でした。
でも、おばさまは独身でした。
「すてきなおばさまなのに、なぜ結
婚しないのだろう」
かきつばたは、ふしぎに思っていま
した。



おばさまは、かきつばたを自分のこど
ものようにかわいがってくれます。
そのおばさまが病気になり、何カ月も床
についたままでした。
「おばさま、早く元気になってくださ
いね」
かきつばたは、毎日おばさまのみまい
に行きます。 



「かきつばた、おみまいありがとう。
残念だけれど、私は後わずかしか生き
られないわ。
霧が峰には、もうきすげの花が咲いて
いるかしら」
「きれいに咲いているでしょうね」
かきつばたは、黄橙色のきすげの花を
おもいうかべながらいいました。


           つづく



かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原に伝わっている「かきつば
た」の伝説をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。



童話集「ライオンめざめる」は、昨年十
月、「鳥影社」から発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお話
が、三つのっています。