かきつばたになった少女


   かきつばたになった少女5


「かきつばた、きすげの花はね、私が
少女だったころ、大好きな人から、初
めてもらった花なの。
その人は、ふもとの村に住んでいる人
間の少年だった。



私は、その少年と何度も霧ケ峰へ行っ
たわ。とても楽しかった。
なくなる前に、もう一度きすげの花が
みたいわ」
おばさまは、遠い昔をなつかしむよう
に、そういいました。



おばさまの話を聞いたかきつばたは、
なんとかしておばさまの最後の願いを
かなえてあげたいと思いました。



しかし、女神さまたちは、一人で遠く
へでかけることを、神様からかたく禁
じられていました。
そのため、かきつばたは、誰にも行き
先をつげず、たった一人で霧が峰へ行
こうと思ったのです。


          つづく



かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原に伝わっている「かきつば
た」の伝説をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。



童話集「ライオンめざめる」は、昨年十
月、「鳥影社」から発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお話
が、三つのっています。