かきつばたになった少女


かきつばたになった少女6


霧ケ峰へつくと、広い草原には、きす
げの花が、一面に咲いていました。
「わー、きれい!」
かきつばたは、思わず大声をあげま
した。



「おばさまは、この草原を、大好き
な人といっしょに歩いたのね」
かきつばたは、二人の姿を思いうか
べながら、夢中できすげの花をつみ
ました。



ところが・・・。
はっと気がつくと、あたりは霧で真っ
白でした。
いつ霧がでてきたのでしょうか。
かきつばたは、いそいで家に帰ろうと
思いました。



しかし、濃い霧のため、一寸(約三セ
ンチ)先もみえません。
とほうにくれたかきつばたは、沼のほ
とりで、霧が晴れるのをじっと待ちま
した。


          つづく



かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原に伝わっている「かきつば
た」の伝説をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。



童話集「ライオンめざめる」は、昨年十
月、「鳥影社」から発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお話
が、三つのっています。