かきつばたになった少女8
少年の姿をみた時、かきつばたはほっ
としました。
「こんにちは。すごい霧だったね」
少年が、にこにこしながら近づいてき
ました。
「こんにちは。すごい霧でびっくりし
たわ。もう家に帰れないのではないか
と思ったわ」
かきつばたは、ほっとした顔でいいま
した。
「みかけない顔だけれど、きみ、どこ
からきたの?」
「あの山の向こうからよ」
「きみの名前は、なんていうの?」
「かきつばたといいます」
「えっ、かきつばた?」
少年は、驚いたような顔をしました。
つづく
かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原に伝わっている「かきつ
ばた」の伝説をヒントにして、
みほようこが書いた物語。
童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライ
オンめざめる」に収録されています。
童話集「ライオンめざめる」は、昨年
十月、「鳥影社」から発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお
話が、三つのっています。