かきつばたになった少女


    かきつばたになった少女10


「色は黒いけれど、山彦さんてすてき
なかたね。おともだちになりたいわ」
かきつばたは、心の中でそっとつぶや
きました。



二人とも、今日初めて会ったのに、い
つかどこかで会ったことがあるような、
とてもなつかしい気がしました。



「かきつばたさん、霧ケ峰へなにしに
きたの?」
「病気のおばさまに、きすげの花をプ
レゼントしようと思って、花をつみに
きたのよ」
「かきつばたさんって、やさしいんだ
ね」



「おばさまは病気なの。それにもう長
くは生きられないわ。
だから、おばさまの最後の願いを聞い
てあげたいと思って、だれにも行き先
をつけず、きすげの花をとりにきたの
よ」


           つづく



かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原に伝わっている「かきつ
ばた」の伝説をヒントにして、
みほようこが書いた物語。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライ
オンめざめる」に収録されています。



童話集「ライオンめざめる」は、昨年
十月、「鳥影社」から発行されました。
信州諏訪の「風の神様」から聞いたお
話が、三つのっています。