かきつばたになった少女


   かきつばたになった少女11


「じゃあ、みんなが心配しているかも
しれないよ。早く帰ったほうがいいよ」
「そうね、早く帰って、おばさまにき
すげの花をみてもらうわ」



「おばさまが一日も早く元気になると
良いね」
山彦は、そういってはげましてくれま
した。
二人は心をひかれながらも、その日は
少し話をしただけで、別れました。



その日の夕方。
かきつばたからきすげの花をもらった
おばさまは、とてもうれしそうでした。
「かきつばた、ありがとう。きすげの
花をみることができて、うれしいわ。
もうなにもおもいのこすことはない」



「おばさま、今日ね、霧ケ峰で山彦と
いう少年に会ったわ」
「えっ、山彦に?」
おばさまは、驚いたような顔をしまし
た。


          つづく



信州の霧ケ峰高原には、「かきつばた」
という伝説があります。


「かきつばたになった少女」は、「か
きつばた」の伝説をヒントにして、
みほようこが書いた物語。


みほようこの四冊目の童話集・
「ライオンめざめる」に収録されてい
ます。



童話集「ライオンめざめる」は、昨年
十月、「鳥影社」から発行されました。


信州諏訪の「風の神様」から聞いたお
話が、三つのっています。