かきつばたになった少女


  かきつばたになった少女12


「おばさまは、山彦さんのことを知っ
ているの?」
「ええ、よく知っていますよ。だって、
山彦は私が大好きだった人のこどもで
すもの」
「えっ?」



「少女のころ、私は霧ケ峰で人間の少年
に会ったの。そして、その少年と何度
か会ううちに、おたがいに好きになっ
たわ。でも・・・今もそうだけれど、
人間の男性と女神は、結婚することは
許されていなかったの。



だから、私はその人と結婚することを
あきらめたわ。
でも・・・私はその人のことをどうし
ても忘れることができなかった。
だから、だれとも結婚しなかったの。



その人は、その後おさななじみの人と
結婚したわ。
そして、生まれたのが山彦。だから、
山彦のことは、ずっと気になっていた
わ」


           つづく



「かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原を訪ねた時に、諏訪の「風
の神様」から聞いたお話。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。



ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))