かきつばたになった少女


   かきつばたになった少女13


「そうだったのね。私なにも知らなか
った」
「この話は、今までだれにもしたこと
がないの。あなたのおとうさまにもね。
この話は、二人だけのひみつよ」



「おばさま、私はだれにもいわないわ。
もちろんおとうさまにも・・・」
おばさまは、若いころの思い出をかき
つばたに話し、すっきりしたようでした。
そして、きすげの花をみたおばさまは、
少し元気になりました。



その後。
かきつばたは、何度か霧ケ峰へ行きまし
た。「おばさまに、きすげの花を・・」
という気持もありましたが、「もう一
度山彦に会いたい」という気持が強か
ったのです。
しかし、山彦には会えませんでした。


          つづく



「かきつばたになった少女」は、信州
の霧ケ峰高原を訪ねた時に、諏訪の「風
の神様」から聞いたお話。



童話「かきつばたになった少女」は、
みほようこの四冊目の童話集「ライオン
めざめる」に収録されています。



ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))

ライオンめざめる―風の神様からのおくりもの〈4〉 (風の神様からのおくりもの (4))