きよと清太と、そして白駒


 きよと清太と、そして白駒28


しばらくして、きよがあらたまった口
調でいいました。
「清太さん。私、縁談の話があるの。
ほら、清太さんも知っている小諸の次
郎さん。次郎さんと所帯をもったらど
うかといわれているの。



次郎さんは、とうちゃんの姉の二番目
のこども。次郎さんが、うちへ養子に
きてもいいといっているらしいの」
「おれ、長者のお使いで、何度も次郎
さんの家へ行った。おじさんもおばさ
んもいいかただし、次郎さんもやさし
そうだし、いい話だと思うけれど・・・ね」



「たしかに、次郎さんは、やさしい人
だわ。でも・・・次郎さんって、小さ
な時から、人のいうままなの。
だから、うちへきても、とうちゃんの
いうままだと思うわ。
私、人のいいなりになっている次郎さ
んを、どうしても好きになれないの」



「次郎さんの家は、家柄もいいし、お
金もちだし、みんなやさしいし、きよ
ちゃんの結婚相手として、次郎さんは
何の不足もないと思うけれど」
「清太さんは、私の結婚相手は、家柄
がよくて、お金もちなら、それでいい
の?」
いつもおだやかなきよが、強い口調で
いいました。


            つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう悲しい伝説があります。


「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。