きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒31


どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
二人には、とても長い時間がすぎたよ
うに感じました。
あたりがだんだんうす暗くなってきま
した。



どこからか、ジャスミンのような香り
がしてきました。
みると、ゆうすげのつぼみが大きくふ
くらんでいます。
鮮やかなレモン色のつぼみでした。



「きよちゃん。後少しでゆうすげの花
が咲くよ」
重苦しい空気をかえようと、清太は明
るい声でいいました。
一枚目の花びらが、ゆっくり開いてい
きます。
「清太さん。花びらが開いてきたわ」
きよが大きな声でいいました。



続いて、二枚目・三枚目・四枚目と、
花びらが開いていきました。
そして、最後の六枚目の花びらが、今
開こうとしています。
「清太さん。最後の花びらが開くわ」
きよが、うれしそうにいいました。


               つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。