きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒33


「清太。おまえは、だれに遠慮してい
るのだ。長者に遠慮しているのか」
どこからか、また声が聞こえてきました。
おらは、世話になっている長者に遠慮
しているのかもしれない。



ほんとにきよちゃんが好きなら、だれ
にも遠慮することなどないのに。
こんな心の声も聞こえてきました。
でも、清太は、自分の気持をきよに伝
えることができませんでした。
きよちゃんには、幸せになってほしい。
大好きだからこそ、自分は身をひくべ
きだと、清太は思ったのです。



二人は、時のたつのも忘れ、ゆうすげ
の花をみていました。
「きよちゃん。ぼつぼつ、家に帰ろう。
長者が心配しているといけないから」
「そうね。帰りましょう。今夜は、ゆ
うすげの花をみることができて、うれ
しかったわ。清太さん、ありがとう」
「おらこそ、ありがとう」
清太は、笑顔でいいました。


             つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。