きよと清太と、そして白駒


  きよと清太と、そして白駒45


「なぜですか? 長者さま。
おじょうさまのことは、今日限りきっ
ぱりわすれます。どうか、今まで通り
ここで働かせてください。お願いします」
清太は、長者にお願いしました。



「清太。そうはいかない。実は、きよ
もおまえが大好きだといっている。
結婚することができない若い二人が、
同じ屋根の下で一緒にくらすことはで
きない。



きよのためにも、清太のためにも、こ
れ以上二人がいっしょにいてはいけな
い。清太、お願いだから、すぐこの家
をでていっておくれ」
長者は、清太にお願いしました。



「長者さま。今日一日だけ、この家に
いさせてください。私は、おじょうさ
まと白駒に、それとなくお別れがした
いのです」
清太は、ひっしで長者にお願いしました。



「清太。今日、一日だけだぞ。明日の
朝早く、みんながおきないうちに、こ
の家をでていっておくれ。
きよには何もいわずにでていってほし
い。たのむ、清太」


             つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。