きよと清太と、そして白駒


   きよと清太と、そして白駒46


「わかりました」
清太は、心ならずもそう答えました。
でも、心の中では、こうさけんでいた
のです。
「おらは、きよちゃんと結婚できるよ
うな家に生まれたかった。
そして、大好きなきよちゃんと結婚し
たかった」と。



「清太。今までよく働いてくれたね。
ありがとう。これは、私の気持だ。
これだけあれば、三ヵ月くらいはなん
とか暮らせるだろう。
その間に、次の仕事をみつけなさい。
清太なら、きっといい仕事がみつかる
だろう」
そういって、長者は、清太にお金をわ
たしました。



「ありがとうございます。この八年間、
長者さまには、わが子のようにかわい
がっていただきありがとうございました。
私は幸せ者です。長者さまはじめ、こ
の家で働いている人たちに親切にして
いただいたこと、一生わすれません。
どうか、おじょうさまに、清太は幸せ
でしたとお伝えください。おねがいし
ます」


               つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」と
いう美しい湖があります。
その湖には、「白駒の池」という悲し
い伝説があります。



「きよと清太と、そして白駒」は、そ
の伝説をヒントにして、みほようこ
書いた物語。